第10話

「まだ西の方を音針盤が指してるね。」と詩音


「う~ん。このまま九州に入りそうだね。」と亜斗


「宇都宮さんはついてきてる?」と詩音


「ああ。どでかいバイクでついてきてるよ。まあ、のんびりいこうか。」と亜斗


しばらくして


「この辺に反応がある!亜斗、止まって!」と詩音


「わかった!小倉か。コインパーキング見つけないとな。」と亜斗


コインパーキングに車を停め、宇都宮とも合流した。


「いやぁ、小倉の繫華街のど真ん中か!お子様にはキツイ誘惑もあるかもねw」と宇都宮


「誰がお子様だよ!」と亜斗


「それよりここからどうやって探すの?音針盤はくるくる回ってるし。」と詩音


「取り合えず、街をうろつくか。」と宇都宮


しばらく繁華街を3人で歩いていた。そうすると


「ちょっとそこの若いお兄さん、そこのホテルによってかない?」


とおばあさんが言ってきた。


「え?俺のこと?」と宇都宮


「あんたじゃないよ。もう一人のお兄さんだよ。お兄さんイケメンだから安くしとくよ!」


「え?何が?」と亜斗


「聞くな。何もなかったことにしろ。」と宇都宮


「それよりそこのお嬢さん、べっぴんさんだね!あんたなら一日で数百万稼げるよ!どうだい?うちで働かないかい?」


「え?何のこと?」と詩音


「聞くな。忘れろ。」と宇都宮


「あんた、うちの商売の邪魔ばっかりするんじゃないよ!それともあんたが欲しい情報があるんじゃないかい?音の者たち。」


「なんでわかった?俺たちのことが?」と宇都宮


「もしかしてあんたが夢堂の手下か?」と亜斗


「ふぉふぉ。そんなんじゃないわい。わたしゃただの情報通だよ。どんな情報だってすぐに耳に入るのさ。」


「おばあちゃん、じゃぁ、夢堂の手下はどこにいるの?」と詩音


「それはパチンコに勝ったら分かるよ。」


「パチンコかぁ。運要素が強いな。それに俺しか入れないし」と宇都宮


「あぁ、その辺なら大丈夫だよ。俺たちも入れる。この免許証を見せたら。」と亜斗


「おお、これか。18に見える波動が込められているな。さすが。」と宇都宮


「じゃあ、行ってみよう!」


と張り切る詩音


近くのパチンコ屋に入った。すると


「うわ、この騒音は何?私、くらくらしちゃう。」と詩音


「確かに。詩音だとなおさらかもね。」と亜斗


「まぁ、パチンコなら俺に任せておきな!」と宇都宮


数十分後


「だめだ。俺はだめだ。」と亜斗


「まだいける!もう少ししたら出るはずだ!な、亜斗、金貸してくれ!」と宇都宮


「それより詩音見てみろよ。魚群ばっかり出てるぞ?もう20連ぐらいしてるんじゃないか?」と亜斗


「くそ!これいじょうやっても沼るだけか...。詩音に任せよう。」と宇都宮


さらに数時間後


「みんなーお待たせ!5万発出たよー!お魚さんだらけ!これどうすればいいの?」と詩音


「取り合えずカウンターに行って、交換してもらって、皆さんどちらに行かれてるか聞いてみな?」と宇都宮


「わかった!」


カウンターに行き


「あのー、これ持って皆さんどちらに行かれてますか?」と詩音


「皆様はあちらですが、お客様の場合はこちらの通路へお進みください。少し入り組んでいますが、基本、一本道なので迷うことはないでしょう。」


とカウンターレディが言った。


「ありがとうございます!」


と詩音はそう言って店を出た。


「なぁ、どうする?どう考えても敵陣に誘われてると思うぜ?」と亜斗


「こっちから探す手間が省けて楽でいいじゃねえか?」と宇都宮


「どっちにしろ対峙しなければならない相手だから進んでみよ。」と詩音


細い道を進んで行き、あちこちで何度も方向を変えたため現在地がどこなのかが分からなくなった。しかしカウンターレディの言う通り一本道なのでその辺は安心できた。


しばらく歩いて黒いドアに突き当たった。それを開けるとフェンスで囲まれた大きな部屋に続いていた。そしてその奥に革のベストを着て、両肩にサソリのタトゥーを入れたいかつい男がベンチに座っていた。そして男は言った。


「あんたが光の方の音の人間かい?俺はここら一体を仕切っているスコーピオンて呼ばれる奴だ。俺はあんたがこの世界の頭になろうが夢堂が頭だろうがどっちだって構わねぇ。ただこの辺りの秩序を守れればそれでいい。だが、弱ぇえやつには仕える気にはならねぇ。相手になってもらうぜ。」


と言ってベンチから立ち上がると、両肩のサソリのタトゥーからメキメキと大きなハサミが出てきて服が破れてきて巨大なサソリとなった。


詩音たちは各々、武器を取り出し、スコーピオンに立ち向かった。


「詩音、亜斗、あのハサミに挟まれたら一巻の終わりだ。注意して戦え。」と宇都宮


「それにしてもあの人、色がないわ。悪意はないみたい。」と詩音


「悪意がなくても殺されたら終わりだろ?」と亜斗


そう言っているとサソリのしっぽから毒液を飛ばしてきた。


「危ない!」


と宇都宮が亜斗を突き飛ばし、背中に被弾した。


「ぐっ!背中がひりつきやがる...。」と宇都宮


「大丈夫?色彩変位グリーン!」


と詩音が宇都宮を治療した。


「助かった、詩音。ひとまず両手としっぽを切り離さないとな。」と宇都宮


「俺にいい考えがある。詩音、あの毒を無害化できるか?」と亜斗


「回復薬にはできないけど無害化にはできる。」と詩音


「じゃぁ、宇都宮さん、銃で俺と一緒にあいつの目を狙って!」と亜斗


「よっしゃわかった!それからどうする?」と宇都宮


「おそらくあいつは目をガードすると思うそこで詩音が共鳴刀でハサミを切るんだ!」と亜斗


「それはいいかも!亜斗、私の共鳴銃も使って!」と詩音


「じゃあいくよ!」と亜斗


「まずは私、色彩変位、オールグリーン!」


「宇都宮さん、行きますよ!」


「よっしゃあ!」


ダン!ダン!ダダダダダダ!


「今だ!」


と詩音が共鳴刀で右のハサミを切った。


「おのれ!小癪な!」


とスコーピオンが叫び、しっぽを突き下してきた。それを詩音はひらりとかわしてその隙にしっぽも切り落とした。


「さぁ、もういっちょ行くぞ!」と亜斗


「あ~あ、やめだ、やめ。」


とスコーピオンが言って、元の人間の体に戻った。


「いてて。こんなにも攻められると体がいくつあっても足りないぜ。ったく。あんたらが強いのはわかった。俺はあんたたちを支持するよ。そしてこれからもこの辺りを平和に維持していくよ。俺は悪さはしねぇ。悪いやつらは裁くけどな。」


「んじゃあとはスコーピオンを信じて任すよ。」と宇都宮


「でも私たちは夢堂の闇を減らすために戦ってるんだよね?平和主義のスコーピオンさんをなんで倒す必要があったの?」と詩音


「それは至極単純さ。俺がれっきとした夢堂の手下だったからさ。どっちつかずにいたのは間違いないが、力が与えられるなら、この街を守れるならどうでもよかったのさ。」


「そっか。スコーピオンはいいやつなんだな。」と亜斗


「あと、これをやる。俺の仲間の側を通るだけであんたらの仲間になる。そのコインさ。」


とスコーピオンがサソリのマークが入っているコインをくれた。


「じゃあ、私たちはもう行くね。スコーピオンさん、ありがとう!」と詩音


「おう!あと、来た道は入口専用だから裏口から出て行きな!それじゃあな!」


詩音たちは裏口から出た。そうすると、パチンコ屋のすぐ前であった。


「あんなに長くて入り組んだ細い路地だったのに、裏口から抜けるとこんなに近いの?」と亜斗


「たぶん、結界かなんかがはられてたんだろうな。」と宇都宮


「とりあえず近場のホテルに泊まろうよ。私はシャワーを浴びたいよ。」と詩音


「確かに俺も疲れた。東横インでもアパでも探すか。」と宇都宮


「何、そのホテル?有名なの?」と亜斗


「まぁ、有名ではあるがな。」と宇都宮


「取り合えずホテルさがそうよ。」と詩音。


そう言って一行はホテルを探しに行った。

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