第17話 ひとりぼっちが良すぎた件

 水曜日、私は病院を2件はしごした。

 片方は健康診断で『要治療』となったため、大病院で検査。

 もう片方は、毎月定例の精神科。


 大病院では検査が3つもあって、朝の8;30から14;00までかかった。まず呼ばれるまで1時間弱待って、検査回されて待って、また診察室に呼ばれるまで待って。

 その結果が――

「生まれつきです、治療の必要はありません(微笑み)」

 ものすごい肩透かしである。


 とはいえ、案外ストレスはなかった。

 暇つぶしに本を持参していたし、見たかった動画もずいぶん見たし。なにより本当に大きな病院なので、院内にあるカフェでまったりお昼食べられたし。

 急かされない、怒鳴られない、食べたくないものを押し付けられない。

 最高にマイペースな時間に、病院にはそぐわないウキウキした気持ちになっていた。


 そのあと、徒歩で精神科へ移動。

 大病院はだいぶ冷房が寒かったので、外の暑さが本当に心地よかった。

 もともと太陽が好きな私である、紫外線どんとこい(といってもインドア職業)。ちょっとだけ位置情報ゲームをして、あとはスマホのナビに頼りつつ移動。

 私はかなり位置ゲー歴長いんだけど、一人のときは歩きながらはやらない。危ないのもあるけど、スマホの画面よりも見たいものが多いし。キレイな花とか、素敵な看板とか、街中に潜む遺跡とか。ナビのとおりに歩いていても、面白いものは案外見つかる。


 15分弱で精神科へ。

 そこの先生は、よくお話を聞いてくださる先生。

 最近の私はイライラしていたけど、この日は心が穏やかだった。この一か月の体調から始まり、愚痴に隠れていた大胆な本音だとか、将来の目標も話せた。近くの薬局のおじいさんも話し好きな人で、相変わらずこちらを諭したがるのを笑って流した。

 この瞬間まで、本当に穏やかな一日だった。フリーランスのSEをやめてからというもの、味わったことのない静かな時間だった。


 が。

『早退したー』

 というLINEが相方から入って、一気にダルくなった。

 うちの相方は、私と真逆。一人が死ぬほど嫌いな人。

 ……でもって、めんどくせぇくらいエラそうな人。

 な ん で 終 業 ま で 働 か な い ん だ よ !

(答え:私と同じ精神病のため、気力がもたないから。私は早くから自覚があったため、いろいろ工夫を続けてかなり回復しています)


 で。その後、結局21;00くらいまであちこち行く羽目になり。

「あのさあ。……私も疲れやすいんだから、早く帰れって何度も何度も言ってるよね!?」と、もう日々の終わりの定例句をイライラしながら吐くことになったわけである。

 いやまあ、想像はしてたけどさ。思いっきり開放感を味わった直後だったから、余計きつかったわ。



 私は本当に、ひとりが大好きである。

 人嫌いではないけれど、人がいないに越したことはない。一人の時間が一番休まる、何をしても一番捗る。人が関わると何もかもが辛くなる。

 ああ、せめて月に1日、24時間まるまる一人でいられたら幸せなのになあ……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る