第13話 Black or White?

 簡単な仕事に時間かけて。

 定時にお先にと会社出て。

 あちこちの店で買い物をして。

 疲れ切って外食して。

 夜遅くに帰宅して。

 いやいやシャワー浴びて。

 スマホ見ながら寝落ちして。

 疲れの抜けない体で出社する。


 それでも出る給料。

 更に加えてボーナス。


 働きやすい職場ですが、これってホントにWhite?


 ――なんかラップ調になりましたが、こんな日々で病んでいるのが私です。


 私は就職氷河期に就職して、ブラック企業という言葉が生まれる前年くらいに病気退職した。今ならブラックと言われておかしくない業態だった。終電帰りは当たり前、日によっては泊まり込み。休日出社しても代休もなかった。残業代も出なかった。


 ただ、私が病んだのはハードワークが原因ではない。

 むしろハードワークの頃は充実していたし、実家に帰りたくない私に休日出勤は救いだった。私の実力よりはるかに高い仕事内容は、私を急激に成長させてくれた。忙しさゆえにチームは結束し、飲み会やカラオケで弾けまくった。

 あの頃は楽しかった。何かを作っているという実感があった。

 私が精神を病んだのは、専門外の仕事に任命されたストレスからが大きい。その時も珍しく定時で帰れていたし、ゆとりのある毎日を手に入れたはずだったのに突然絶叫し、精神病院に駆け込むことになった。


 人生を『創造する』事に注ぎたい私にとって、優良な職場の条件は定時ではない。給料でもない。ボーナスでもない。遊びにいくお友達ができることでもない。

 とことん、没頭させてくれること。達成感があること。挑むのに値する厳しさであること。チームはあってもいいがオトモダチはいらない、創ることに前向きな仲間がいれば会話もいらない。価値ある内容なら残業も休日出勤も泊まり込みだって構わない。

 大事なのは達成感。学ばねばと思わせてくれる環境。

 楽な仕事で飼われているなんて、プライドが腐っていくじゃないか。

 実際、今の私はじりじりと精神疾患を悪化させている。


 今の労働基準法が嫌いだ。

 ホワイト企業とのたまう会社が嫌いだ。

 そんな職場で無知を深める奴らが嫌いだ。

 高校普通科で味わった、未来の見えない延長戦はいらない。

 ただ猛烈に創りたい。だから選んだ職業だ。


 そんな不満を抱くのは、黒も白もなかった大昔の人間だからでしょうか。

 妙にいら立ちを覚えながら、明日も私は出社する。

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