第11話 私の事をなめんなよ!?
どうも、四半世紀前にWindowsNTでSEをやっていたみきてぃです。
って書いても、今どきの子は知らんやろ!てか同年代でも知らんやろ!
私は、世間が『電子化』に沸き立っていた頃にプログラムを書いていた。『デジタル化』ではない、『電子化』だ。MOなんてものが世を騒がせて、フロッピーも意外と使って、磁気テープだって生き残っていた世代である。インターネットがやっと普及し始めたけど、まだまだ基本は紙ベース。それをえっちらおっちらと、コンピュータに移し替えてたのが私だ。
15年ほどブランクがあって現場に戻ったら、今でも当時のプログラムが修繕されながら動いていた。ものすごく驚いたのと同時に、「ということは、私の名前が書かれたプログラムは、あの大手銀行や大手商社で今でも動いてるってことかなぁ」と、ちょっぴり優越感に浸ったものである。なんせ私、東京にいたんで。
精神は壊しちゃったけど、徹夜や泊まり込みしてまで働いた甲斐はあったのかもな。てか当時現役だった人は、みんなそんな思いを抱いているのかも。
当時の設計書の細かさを覚えている。
テスト仕様書だって、何度もリテイクさせられた。
表記の統一、書式の統一、文言表現の些末に至るまで、全てが一致するように作ってきた。
これは、今でも超大手と呼ばれる現場では同じだと思う。
すべては品質のため。
データを守り、間違いのない計算に導くため。
細かさはSEの誇りと言っていい。
――はず、なんだけど。
「あのう……これ、ちょっと表記が違っちゃだめですか?」
今日の書類に関するミーティングで、年下の上司が吐いた言葉がこれである。
おいおい。世代が10年違うと、こんなに劣化すんのかい?書類ってぇのはSEとか云々の前に、表記統一すんのは当然でしょ!してないせいで色々ミス起きてるって、アンタ分かってないん!?
私の笑顔には、多分『こいつ何言ってんの?』って出てたと思う。だって、めっちゃビクビクしてたもの、その人。
まあ、これは地域性もあると思う。
東京の現場はどこも大手であり、影響も大きいので、書類の体裁には非常に気を配っていた。ちょっとの句読点のズレすら注意されるほど、文章に心血を注いだ。
だけど、今いるのは一地方都市である。多分『全国民から叩かれるかも!』という恐怖が弱く、なんとなーくで来ちゃったんだろう。……正直、今やってる私の作業も自動化した方が正確なのに、不確かな人力頼りだしな。(勝手にAI組んだろかと思う今日この頃)
でもなあ!データはお客様の分身なんだよ!
それを守る誇りと気概は持ちなさいよ!
頑張ってたら、いつか自分の名前が刻めるプログラム書けるかも知れないじゃん!
そのためには厳しくならんかい!定時に帰れるんだからさ、今は!
私には、この土地でやりたい夢が2つある。
一つは作家デビュー。
もう一つは、この地のSEの質を上げること。
……二つ目は、正直無理かも……。
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