第6幕 流石姉
第29話 Hello, めぐっち
【The
ストーカーに襲われた日、徹夜で書いた記事は予想通り炎上した。
自業自得。
日頃の行いが悪い。
しかし、SNSに書き込まれた誹謗中傷の数は思ったよりも少なかった。
彼氏に守ってもらってたんだ。
同棲はよくないけど、仕方ないね。
事務所に内通者がいるかもしれないとかヤバすぎ。
事務所ちゃんと仕事しろよ。
擁護に徹した記事を書いたことで、同情の声が多く集まった。
ゴシップ記者としてこんなにも彼女に肩入れした内容でいいのかと思われるかもしれないけど、知らん。
愛衣のためだったらなんでもする。
いつの間にか芽生えた決意と熱意。
それが上手く読者に伝わったのか、愛衣を叩く声よりも事務所を叩く声の方が多かった。
これには私も愛衣もビックリ。
記事に書きこまれるコメントを見ながら、顔を見合わせてしまった。
そして、私は忘れていた。
めぐっちに報告することを。
自分で「記事にする前に報告しとかんと――」っていったくせに。
記事を書きあげた直後、愛衣に記事の内容を確認してもらい、私たちは眠ってしまった。
爆睡。
深い眠りから日常に引っ張り上げたのは、ずっと鳴り続ける着信音。
既視感を覚えながらスマホを手に取り青ざめた。
「愛衣ちゃん」
「……ん……おはよう」
「おん、もう昼やけどな。じゃなくて、ごめん」
「え? なに……あっ」
スマホの画面を見た愛衣は頭を抱えた。
「忘れとった」
初めて見るそんな姿。
ウルトラスーパーレア。
可愛い。
って見惚れている場合じゃない。
「ホンマごめん」
「取り敢えず私が出るわ。ちゃんと説明する」
「おん、頼んだ」
スマホを愛衣に渡す。
一呼吸置いて画面をタップし、耳に当てた彼女は、
「お姉さ――」
初手からブチギレられていた。
隣で耳をすまさなくても聞こえてくる罵声。
いくら溺愛する妹とはいえ、ブチギレるときはブチギレるらしい。
めぐっちとは長い付き合いだけど新発見。
手を合わせて頭を下げる私を見ながら愛衣は苦笑いし、
「はい、ごめんなさい。でもな、守ってくれたんはひろちゃんやねんで」
私を擁護してくれた。
すると、途切れた怒声。
うん、そうなるよね。
記事には書いてないもん。
愛衣が襲われたこと、警察が駆けつけたことは書いていても、私が命を投げうって助けようとしたことなんて。
「うん、うん、うん……これからは気をつける。うん」
兎に角姉の怒りを収めるため素直に返事をし続ける彼女。
「うん、代わるわ」
そして私にバトンタッチ。
恐る恐る電話に出ると、
「いろいろ言いたいことはあるけど、守ってくれてありがとうな」
お礼を言われました。
てっきり私もブチギレられると思っていたので拍子抜け。
「いや……あの、うん。報告が遅うなってごめん」
怒られてないけど謝る。
先手を打つ。
大事大事。
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