第20話 復讐もしくは報復

 The TwilighTの出演を観終え、番組に興味を失ったのかチャンネルを変えた愛衣。


「ところで、なんで涼香すずかやったん。他にもおったんやろ、隠れて付き合ってる子」


 ぼーっとテレビを眺める彼女に問いかける。


「対立してるっていうのが大きいんやけど、一番の理由は多分あの子が私の情報を流したから」


「あー……」


 涼香の熱愛場面を押さえるため、二人で張り込みをしたときにも聞いた言葉。


「あと」


 深刻な顔でニュースの原稿を読むお姉さんから視線をこちらに向け、


「マネと二股かけてるもん」


「は!?」


 聞いてない聞いてない。


「これ、第2弾で書いてな」


「書くけど。最初に言うてや」


 衝撃的過ぎ。


 マネージャーと付き合ってんのかよ。


 個人的には、彼氏と同棲していた愛衣よりも最低な気がする。


「ふふふっ。情報は小出しにした方がおもろいやろ」


「いやまぁそうなんやけど」


「マネと付き合ってるから私に彼氏がおるのも、同棲しとるのも知っとった。復讐というか、報復というかなんというか」


 ニッコリしながら言うことではない。


 決して。


 目が笑ってないし。


「目的は果たせたと思うで。涼香は間違いなく炎上するやろうし」


「うん。よかったよかった」


 嬉しそうに言う愛衣に少し狂気を感じる。


 これがお嬢様の本当の姿なんですかねえ。


「ところでさ、ずっと気になっとったことがあるんやけど」


「なに?」


 いつの間にテレビを消したのか。


 リビングを支配する彼女の声。


「大親友の妹の記事を書くんに抵抗はなかったん? 迷いはなかったん? 良心は痛まんかったん?」


 矢継ぎ早にあびせられる質問。


 そこに悪意は見えなくって。


 純粋な疑問として聞いているように思える。


「それが仕事やから」


 だから、正直に答える。


「私をクビにした出版社に一泡ふかせたいし」


「私とおんなじやね」


「まぁそうやね」


 復讐もしくは報復。


 多分私たちは似た者同士だ。

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