第7話 誰が敵で誰が味方か

 自宅謹慎。


 たった4文字に込められた意味は相当重い。


 私が返す言葉は一つ。


 自業自得。


 おや、偶然にもこちらも4文字。


 そんなことを心の中で考えていると、

「『落とし前つけてもらわなな』って言うたやん」

 めぐっちが静かに言った。


「せやけど……なんで私のとこなん。ホテルっていう選択肢があったやろ」


 私の家なんかより、そっちの方が妥当だ。


 いくら高田愛衣の身から出た錆とはいえ、私が炎上のきっかけを作ったのだから。


「従業員がチクる可能性あるやろ」


「ない、とは言えへんな」


 壁に耳あり障子に目あり。


「根本的にな、ホテルを嫌がったんは愛衣なんよ」


「え?」


 思わず彼女を見る。


 お互い玄関に立ったまま。


 彼女は、ずっと笑顔のまま。


「愛衣が言うにはな、彼氏との同棲を知っていたのは、事務所の人間の一部とメンバー数人。あと、私だけ」


「ふむ」


「友人には言っとらんらしいから、流出元は確実に身内」


「成程」


 そりゃそうだ。


 事務所内に敵がいるとなると……安易にホテルには泊まれないし、誰も信用できない。


「で、口を滑らしたのは誰や」


 ドスの効いた声。


 脅されてますよね、確実に。ヘルプミー。


 なんて、ちょけるのはやめて。


「ここだけの話な、匿名やったんよ。情報提供」


「あん?」


 いや、ここで私にキレられましても。


「しかも『報酬はいらん』って言うたねん。密会場所やら二人の出会いやらを一方的に話して終わり。そのあと連絡つかへん」


 思い返せば、非通知でかかってきた電話を誤タップで出てしまったあの日。


 自分を褒めてあげたい。


「ようそんな情報信じたな」


「最初は胡散臭い思たよ。やけどさ、試しに密会場所を張ってみたら現れてもたんやもん」


 証拠押さえちゃったからねえ。


 追わないわけにはいかないでしょ。


「まぁ……それがひろっちの仕事やもんな」


 ため息交じりの声。


 申し訳なさがこみ上げてくる。


 大親友の妹の記事を書いてしまったけれど、さっさと追い返すことなく高田愛衣を家に入れてしまった。


 冷淡になれない。


 記者として失格。


 そういうところが、いつまでたっても半人前で未熟者、の原因なのかもしれない。

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