第2話 怒りの電話

「あっ、めぐっち」


「なにが『あっ』じゃボケっ」


 初手から暴言を吐いたこの人は、大親友『高田たかだ愛実めぐみ』。通称『めぐっち』。


 私の実家は結構お金持ち。


 家割と広いし。トイレ3つあるし。


 でも、めぐっちの家は比じゃない。


 大豪邸、のお隣に住んでいた私たち岩永いわなが家。


 通っている学校は違うかったけど、お隣さんだから小さい頃から毎日のように遊んでいた。


 つまり、幼馴染。


「お前さぁなにしてくれてんねん」


 彼女が何故ブチギレしているのか。


「えーっと」


「おいこら」


 私がめぐっちの溺愛する妹――高田愛衣めいのスキャンダル記事を書いたからです。


「大炎上しとるやんけ。誹謗中傷の嵐やんけ。どないしてくれんねん」


 あー出るんじゃなかった。


 後悔したところで時すでに遅し。


「愛衣、事務所から言われて彼氏と別れさせられたねん。アンタが書かんかったら二人は幸せでおれたかもしれへんねん。おい、どないしてくれんねん」


 数十秒の間に、二度目の「どないしてくれんねん」いただきました。


「いや……アイドルなんやし」


 めぐっちにつられて関西弁になる。


 東京に出てきてからは標準語で喋るように意識していたのに。


「はぁ? アイドルやからなんやねん。アイドルの前に一人の人間やろ。恋愛したってええやろーが」


 声のボリュームは落としてくても、言葉の端々から怒りが伝わってくる。


 対面じゃなく、電話越しで良かった。


 すぐに手が出る人らしいから。


 確実にぶん殴られてる。

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