第27話(2)

 帰り道。


 呆然とした意識は、強引に引き戻される。


「……い、おい!」

 ぐいっと強く腕を引かれて見上げると、


「え――――!!」


 息が引き攣れたような声が出る。

 立っていたのは、あの日別れた両親だった。


「ようやく面と向かって話せるな」

「随分楽しんだようね。もう良いでしょう、戻ってきて貰うから」


(どういうこと!? なんで――!)


「そんな力があったのに、どうして言わないのよ。これだからあんたは駄目なのね」

「使えないのは前からだが、ここまでだと嫌になってくるな」


「な、ならどうして……」

「どうしてだと? ふざけるなよ?!」


 大きな声に驚いて、萎縮してしまう。


「雲林院も栄明寺も存続の危機なのに、どうしてそこまで人ごとでいられるの? とんだ親不孝者よ、お前は!!」


「親不孝は今に始まったことではないだろう。とにかく、戻ってきてもらう。なんとか理由は付けられるだろう。明日中に戻って来い。そうすれば許してやっても良い」


 私はそこでもう一度、なけなしの勇気を振り絞った。


「嫌……! 許すって何を――」


 そこまで言ったとき、乾いた音がして右頬に熱い痛みが走った。かくんと膝から崩れ落ち、アスファルトに手をついた。視界には硬い地面しか映らない。


 今まで見ていたあたたかい世界など、何も。


「ほんっとうに言うことを聞かない女ね。お前は使われて終わり、そういう人生でしょう? 今になってわがままを言わないで!」



 そこで何かがぷつんと、切れた気がした。

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