第17話
放課後。
教室に残って要項に目を通しながら、私はふと思いついたことがあった。
「ね、こういうのってさ、出てくる場所はわからないの?」
「わからんことのほうが多いで。なんならこっちは一体やと思って仕事行ったのに他のも居ましたとかもざらにあるしな」
浅田君の回答にしずが付け加える。
「やし被害者のプロフィールとかどこをどのルートで回ったとか書いてあるんやけど、これは流石に……」
「情報が少なすぎるんだよな」
冬が会話の最後をキャッチした。確かに、前に見た要項より紙の枚数はあるものの、載っている情報は薄い気がする。
「もうちょい割れててもええのに、全っ然わからん。わからんことばっかやん。ほんま、河内の言う通り俺らの後先考えたんやろか」
浅田君が要項を机に置いて伸びをする。どうも、文字を読むのは長続きしないらしい。
「んー、なんかルート見ても特別変ではなさそうやん?」
それは被害者のプロフィールを見ても、同じことが言えそうだった。現在は全員、意識を失って入院中だそうだ。
被害者の一人目は
二人目は
三人目は
四人目は
五人目は
これを見て、何か共通点があると思った人は助けてほしい。
私たちは頭を抱えたが一向に思いつく気配がないので、すぱっとみんな諦めている。だいぶ不安の残る仕事になりそうだ。
その夜、先輩たちに意見を聞いてみたのだが、有益な情報も見解も得られなかった。
コンコン
「はーい」
「俺だ」
部屋に戻った後、冬が伝え忘れていたことがあるとやって来た。
「伝え忘れたこと?」
「ああ。こういう難しい仕事の日は、何かお守りみたいなものを持つのが近畿校では定石でさ」
「お守り……」
「そう。覚前は浄化術でも使うオーデコロン、浅田はメリケンサックだったと思う」
「冬は持ってるの?」
「俺はこれ」
ズボンのポケットから何か、ワンタッチで開けられるような留め具のされた、手のひらに乗る、さほど大きくない丸いもの。ぱちんと音を立てて開けると、ちょうど女子の使う鏡みたいになっているが、入っていたのはまったく別物だった。
「これは……
「そうだ。なんでかは俺もわからないけど、だいぶ前から持ってるものだから。お前はどうする?」
「私は……」
(お守りなんて、一つしかない)
「ピアスにする。冬がくれた」
驚いた顔をした冬は、何故か少し赤くなっているようだった。
「そう。ならいいか」
「うん。浅田君としずはまだ上にいるの?」
「まだ遊ぶらしい。元気が有り余ってんだよあいつら」
苦笑した冬は、紅をポケットにしまった。
「ありがとう、教えてくれて」
「ん。じゃ、おやすみ」
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