第7話(2)
冬と浅田君がそう話していると、しずが立ち上がってどこかに行ってしまった。すると隠岐先輩が、
「アレルギーとかあるか?」
「いえ……たぶん無いと思います」
「なら大丈夫やな」
何かを察した冬が時計を見ながら立ち上がる。
「隠岐先輩、昼食べました?」
「いやまだ食べてへん。待っとこかってなって」
「そうですか。おい覚前、手伝う」
「河内とエイミーは座っててええよ」
「先輩みんな手伝ってくださいよぉ〜!」
浅田君の順応の速さに驚きだ。
私と冬を残して出ていったみんなが、戻ってくる時にはそれぞれ何かを手に持っていた。中には持ち物をぎりぎりで支えている人もいる。
「先輩そこ通してください重い重い!」
「も〜川上先輩、鍋敷き忘れてる!」
「まじ? ごめん持ってきて」
ばたばたと行ったり来たりしながら、ちゃぶ台に鍋や皿などがたくさん置かれていく。紙でできた厚くて平たい箱を開けると、大きなピザが一枚入っていた。その箱が二つと、小さな鍋に入っているのはスープのようだ。大きな皿には唐揚げやフライ、別の皿には山盛りのサラダ。パン、クラッカー、ジャムなど続々と出てくる食べ物で埋め尽くされていく。
「飲み物何がいい? なんでも入れて」
(七人にもなると、こんななんだ)
オレンジジュースをもらってガラスコップに注ぎながら少し感心する。
「毎回思うんすけど有馬先輩、料理うますぎません?」
「え、これ全部……?」
「ピザ以外」
「すご……」
これだけの量を作るには、かなりの時間がかかるだろう。当の本人は、趣味だからと大したことなさそうに言っている。
「はい、じゃあ」
隠岐先輩がコップを持ち上げると、みんながそれに従った。私もコップを持つと、
「エイミー入学おめでとう〜!」
「えええ!?」
「ったり前でしょ〜?」
まさか私の入学が名目にあるとは思っていなかった。あまりのことに拍子抜けしてしまう。そして、私のためらしい宴会がはじまった。
二時間ほど経つと、宴会もだいぶ落ち着いてきて、残っている料理もはじめよりだいぶ減ってきていた。
「ただいまー。楽しんでる?」
「それはもう大いに! 先生ナイスチョイスやわ」
「いつ来た? 冷めなかった?」
「全然大丈夫やったで。ごちそうさまでした」
久々宮先生が顔を見せた。しずと川上先輩の返答を聞く限り、ピザは久々宮先生のセレクトらしい。
「俺もつまんでいい?」
「渡辺先生はどうしたんですか」
冬の隣に座った久々宮先生は「仕事の場所違ったからわかんない」と唐揚げをひとつ口に入れた。
「相変わらず美味いな有馬。あ、そうだ。制服来てたから部屋の前置いといた。この学校は入学式早いから、明日着てみてサイズ合わなかったら明日中に言ってくれ」
「わかりました。ありがとうございます」
「学校案内は明日?」
「そうですね」
冬が頷いた。
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