第7話(1)
盆地と山の境目。そこに近畿浄化師専門学校は貫禄ある雰囲気をまとって建っていた。結構広大な敷地だ。
「僕はこれから仕事あるし、久々宮に案内してもらい」
「いやあ、実は俺もさっき仕事入ったんで」
「出張帰りやんか」
「見ての通り」
はあとため息をついて、眼鏡から眼帯に変えながら久々宮先生が言った。
「学校の案内は冬に頼むよ」
「言うと思いました」
ワゴン車から降りて荷物を取ると、車窓が開いた。
「んじゃ、頼んだよ〜」
それだけ言い残して、そのまま先生二人ともが仕事に向かっていってしまった。
「浄化師って忙しいんだね」
「まあ、あの人たちは強いからな。年中働いてるよ」
冬がスマホで何かメッセージを送りながらこくんと頷く。案内されて、連れられて門をくぐって広いグラウンドに入ると、建物の全貌が明らかになった。木造で瓦葺き。いかにも京都らしい建物だ。
「先に寮に行こう。荷物置きたいだろ?」
「まあ……そんなに荷物はないんだけど、ちょっと重いかな」
エントランスを通り過ぎ、靴のまま学校に入っていく。上靴は無いらしい。そのまま大きな部屋を通り過ぎて二階まで階段で登り、渡り廊下に出る。
「こっから先が寮。寮も靴でいいけどスリッパ履いて移動してるかな。部屋の中ではみんな靴脱いで過ごしてる」
廊下がまっすぐに伸び、その両側に部屋が三つずつ、合計六つ並んでいる。
「二階は女子寮だから、俺はここから先入れない。渡辺先生に聞いたら、203号室だって」
「ありがとう。置いてくる」
「入ったら一番奥にある寮の階段使って三階に上がってきて。俺も取り敢えず荷物入れてくる」
わかったと答えて一旦別れて203号室を探すと、右側の二番目の部屋だった。ドアノブをひねって押し開けると、和室にちゃぶ台とソファにもなるクッション、布団が畳んで置いてあった。小さな
部屋から出て言われた通り奥の階段を登ると、また冬の方が先に待っていた。
「四階行こう。誰でも使えるフリースペースだ」
階段からフリースペースへは長い
「おっ、来たで」
「ほらやっぱ言ったやないですか! 清楚系ですよ!」
「ストリート系も好きかもしれへんやろ?!」
「なんでストリートと清楚だけで争っとんねや……」
「俺は大人っぽいのが好きなんやけど?」
「誰も好み聞いてへんでしょ先輩」
いきなりの光景に目を瞬かせると、冬がため息をついた。
「もう少しなんか言うこと無いんですか」
「ごめんごめん。女子やってわかった途端この浮かれ具合やねん」
「まあそうでしょうね」
すると一人の女の子が私の前に来た。私と変わらない身長に、高い位置でポニーテールを結んでいる。
「私、同い年の
「よ、よろしく……」
「座って座って! 自己紹介しようや」
手を引かれて二人の女の子に挟まれて座ると、もう一方の女の子が口を開いた。
「この中で唯一、三年の
どうやら一番先輩らしい。茶色の短髪で、座高は変わらないのに脚が長く、スラッとしている。
「次俺! 覚前と河内とお前とも同期んなる、
同じ年齢とは思えないほど筋肉質でガタイがよく、力が強そうな人だ。こくんと頷くと次へと番が回っていく。
「二年の
今度は冬と並ぶくらい大人びた人。口調は軽く、久々宮さんの学生時代はこんなのじゃないかとふと思う。
「二年の
小柄な人だ。川上先輩とはまた違っておとなしい人に見える。
「栄明寺御月です。よろしくお願いします」
全員にこにこと接してくれるので、知らずと張っていた気がほぐれた。歓迎してもらえるなんて、バイト以来だ。
「もう覚えたわ。御月とか音はよう聞くけど久しく会うてへんなあ……にしても名字長ない?」
「うーん……エイミー?」
「へ?」
「こいつ人につけるあだ名が壊滅的でな」
横から冬が説明してくれる。
「エイミーは芸術点やろ」
「栄明寺から取ってることはかろうじて分かるな」
浅田君に川上先輩も笑って付け加える。
「ええ!? あかん?」
目を丸くして言うので思わず、
「いいよ」
「いいのかそれで……」
「だって、あだ名で呼ばれたことなんてないから」
まあ、お前がいいならいいかと冬も納得したようだ。目は丸いままぱああと顔を輝かせて、しずって呼んでと言ってくる。浅田君は特にこだわりはないらしい。
「そういや制服は?」
「まだ届いてねえ。でも昨日久々宮さんが電話してたからもう届くはずなんだが」
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