奇妙な贈り物
ある冬の日の午後。
買い物から帰宅した私は玄関に荷物をおろし、脱いだダウンジャケットをコートハンガーに掛け、洗面所へと向かった。
そして手洗いとうがいを済ませ、リビングへと向かう。
「ただいま、あぁ疲れた……」
私はリビングに到着すると、誰も居ない空間に向けてそう呟きながらダイニングテーブルの椅子へと腰掛ける。
ふとテーブルの方へ目を遣ると、見たことのないものが乗せられたペット用の皿が置かれていた。
それは一見甲殻類のようなのだが、黒い甲羅のようなものの隙間から、これまた黒いゼリー状のものが顔を覗かせている。
さらにはどこか亀にも特徴が似た奇妙な風貌のそれは、漢方薬のような何とも表現し難い異様な匂いを放っていた。
「何なのかしらこれ」
すると、背後から扉が開く音がした。
私が振り向くと、母が愛犬を抱きかかえ室内へと入ってきた。
「お帰りなさい。今日は遅かったわね」
「母さん、これ何なの?」
「さあ…… 昨日弟から届いたお土産の中に入ってたんだけど、私もよくわからないわ。どう料理すれば良いかもわからないからルビーにあげようと思って」
私がそれを指差しながら母に尋ねると、彼女はそう言った。
言われてみれば遠方に住んでいる彼女の弟、つまり私の叔父は旅行が趣味なのだが、時々送ってくれるお土産に紛れて今回は何故か奇妙なものが入っていたのだ。
そして彼女は愛犬を
すると彼は勢いよくテーブルの上に飛び乗り、なんとそれを食べはじめた。そしてあっという間にきれいに完食したのだ。
その日の愛犬は普段よりも動作がパワフルで、夜の散歩中にもかなり元気よく歩いている気がした。
────後日、叔父からのメールによりその奇妙な贈り物の正体が判明することとなった。
なんとそれはスッポンで、彼が職場の同僚から贈られたもののお裾分けであったとのこと。
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