怪しい客

 近所で開催された夏祭りでの出来事。

 辺りは大勢の客で賑わい、熱気に溢れている。

 その日、私は先程購入した苺ミルク味のかき氷を食べながら母と共に屋台出店を見て楽しんでいた。

 すると母はチョコバナナを食べながら嬉しそうに言う。

 

「今年は久しぶりに来たわね」

「そうね、ずっと中止だったから」


 二人でそんなことを話していると、ふと金魚すくいの屋台が目に入った。

 私はそちらを指差しながら言った。


「ねえ母さん、金魚すくいやってみない?」

「いいわね! それにしても最近は動物を使うような屋台はほとんど見かけなくなったわよね」

「そうそう、昔はうなぎ釣りや亀すくいなんかもあったけど、いつの間にかなくなったわね」

「時代が変わったってことかしら」


 私たちは周囲の客を押し退けながら、ゆっくりと金魚すくいの屋台へと向かう。

 近くでよく見ると屋台にはとても長い行列ができており、かなりの待ち時間があるようだ。


「すごく混んでるわね…… どうする?」

「ちょっと待ちましょう」

  

 順番待ちをはじめてから暫くすると、何やら奇妙な人影が視界の隅に入る。その人物は身長の高い男性のようで、少し早足で歩いてきた。そして私たちを追い越したとき、はっきりとその姿が確認できた。

 彼はコスプレイヤーなのだろうか、まるで中世の騎士のような風貌で、首には長いストールのようなものを巻いていた。さらに目を凝らすと、彼が首に巻いているものはストールではなく、よくできた蛇のぬいぐるみのようだ。


「今の人すごくハイクオリティなコスプレしてたわね」

「コスプレイベントの帰りかしら?」


 そんなことを話していると、私たちの周囲の客が何故かざわめいている。

 それから数分後、もう少しで順番待ちが終わりそうになった頃、突然アナウンス流れた。


『皆様、危険生物を持ったお客様がおられますのでご注意ください』


 ということは、まさかあの蛇は本物だったのだろうか。真実は未だにわからない。

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