ユニークな観光バス
それは日帰りバス旅行での出来事。
私はその日、友人と共に割と有名な観光地へ出掛けていた。
秋の行楽シーズンとあって、辺りは観光客でごった返している。
そんな中、一通り観光を終えた私たちは家族へのお土産を購入するために土産物店を見て楽しんでいた。
「何にするか迷うわ……」
「私はこれにしようかな」
まだ迷っている友人を横目に、私はふと目についた手のひらサイズの白猫の置物を手に取った。それには“おみくじ付き”と橙色の太字で書かれた旗のようなものを左手に握っている。
私はそれを家族の゙人数分購入することにした。
「これいいかも」
暫く迷っていた友人が、白地に紺のストライプ柄の平たい箱を手に取った。中央には“濃厚クリームサンドクッキー”と赤い手書き風の文字で書かれている。
「それ美味しそうね! いいじゃない」
「その猫ちゃんも可愛いわね」
私たちはそれらを購入することに決め、会計を済ませ店を後にした。
「さっきの足湯気持ちよかったわね!」
「そうそう、私も足湯なんて久しぶりで感激しちゃったわ」
私たちは雑談しながら大通りを暫く歩いた。
すると観光バス乗り場が見えてきた。
そこへ到着すると、行きのときとは別人なのだが、バスガイドらしき人物がバスの手前に立っている。しかし、観光客らしき人物は見当たらない。確かここは集合場所でもある筈なのだが。
「すみません、帰りのバスの集合場所はここで合ってますよね?」
「はい、そうですが」
「他のお客さんは?」
「皆様もうご乗車されております」
「そうだったんですね! 遅れちゃってすみません」
「いえいえ、お気になさらず。もうすぐ出発いたしますので、お二人もご乗車ください」
バスガイドに促され、私たちはバスへと乗車する。
やはり車内には疎らながら既に観光客がいた。
私たちは中央辺りの空いている席へと向かい、そこに腰掛ける。
「大変長らくお待たせいたしました。皆様、それでは出発いたします」
暫くするとバスの扉が閉まり、先程のバスガイドがそのようにアナウンスした。
そしてバスが発進する。
「今日は楽しかったわね」
「私もまた機会があったら行きたいわ」
暫くすると、バスは信号待ちのため停車した。
「現在信号待ちです」
バスガイドがアナウンスすると、再びバスは発進した。
そして暫くすると、道路を右折する。
「右に曲がります」
それはやけに丁寧すぎる観光バスであった。
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