第7話

「あら、本当! 不思議な植物ね」



「すごいよね。私が演奏をすると育つんだよ」



それが嬉しくて、興奮した感じになってしまった。



でも家でそう何度も練習することはできない。



いくら一軒家と言えども、ご近所さんのことも考えないと。



アサミはじーっと緑の葉を付けた植物を見つめて、またチョンッと指先で触れてみたのだった。



あれはどういう名前の植物なんだろう?



昨日のあの不思議な現象が気になってしかたがないアサミは、次の日の昼休みに1人で図書室を訪れた。



ここなら色々な植物図鑑が揃っているし、あの珍しい種についても調べることができるはずだ。



スマホを持っている友人たちはなんでもかんでもすぐに調べてしまうけれど、それでは詳しい情報は手に入らないと思っている。



アサミは植物図鑑を3冊ほど持って長いテーブルに座った。



どれも分厚くて相当ページ数があるので、開く前に気合を入れるように大きく深呼吸をした。



それから何冊も何ページも確認してみたけれど、あの虹色に輝く種を見つけることはできなかった。



次の本を開こうとしたとき、昼休憩の終わりを告げるチャイムがなり始めて、アサミは大きく息を吐き出したのだった。



でも、種について調べるなら他にも最適な場所、というか人がいた。



それは学校の木や花壇の手入れをしている、委員会の生徒たちだった。



ただ問題なのは委員会活動が行われるのは放課後だということだった。



放課後はアサミも部活動があるから、なかなか部室から離れることができないのだ。



この大切な時期に部活を休むわけにもいかないし、どうするのがいいか悩んでいる間にあっという間に放課後が来てしまった。



「アサミ、部活行こう」



隣のクラスのサトコがいつものように声をかけてくれて、アサミは近づいて行った。



「ごめんサトコ、今日は少し遅れるって先生に伝えておいてくれない?」



「え、どうしたの?」



「ちょっとお腹が痛くて。保健室で休んでから行くから」



「大丈夫? ついていこうか?」



心配してそう言うサトコに、慌てて左右に首を振った。



「ひとりで大丈夫。だからサトコはもう部活に行って?」



「そっか。わかった。先生には伝えておくから、無理そうなら早く帰りなよ?」



「うん。ありがとう」



アサミはサトコに手を振って、保健室へ行くふりをした。



途中振り向いてサトコがもういないことを確認すると、大急ぎで中庭の花壇へと向かったのだった。


☆☆☆


花壇に到着したとき、すでに4人の生徒たちが水やりをしに来ていた。



アサコはそっと近づいて「あの……」と、おずおずと声をかける。



「はい」



3年生と思われる女子生徒がアサミに気がついて手を止めた。



「えっと、委員会の人たちですよね?」



「そうですけど」



「あの、えっと、この前グラウンドで不思議な種を見つけたんです」



「種?」



「はい。虹色に光る種なんですけど、知ってますか?」



その質問に女子生徒は眉間にシワを寄せて首を傾げた。

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