第11話 約束
僕は地区長さんが何かを隠しているようで気になり、再び訪問した。
「地区長さん、さっきはどうして口ごもっていたのですか?」
「いや、気のせいだよ……」
「そうは思えませんでした。何か隠しているのではないですか?」
「いや、隠してはいないよ。ただ、健作君のお父さんも昔いろいろあったんだよ。お父さんの事を悪く思わない方がいいよ」
「そうですか、僕の父は朝から酒を飲んで、もう廃人のようです」
「そうか、とにかくお父さんを大切にしてやってあげろ」
「地区長さんは何か隠していますが、仕方ないですね。わかりました」
僕も何か嫌な予感がしてきた。
たまたま、幸樹と健作が同じ名前なのか気になってきた。
しかし、僕の性は加藤だから、香住さんとは関係はないはず。
そう思うけど、気になって仕方がなかった。
一方で香住は想った。
お父さん、どこにいるのですか?
さびしいです。でも今日は気になる人に巡り合いました。
私だけの想いだと思います。それに、お父さんと会いたいです。
元気にしているでしょうか?
今、どこにいるのですか?
きっと、この島で頑張っていますよね。
私はそう信じています。
健作も想った、そしてその夜は眠れなかった。
明日になったら、香住さんとまた会える。
あの、美しい香住さんに……
僕はもう正美さんの事はどうでもよくなっていた。
それくらい、香住さんに心が惹かれていた。
何を話せばいいのだろうか?
結局わからなかったじゃないか。
きっと悲しい想いをさせるに違いない。
どうすればいいんだ。
そして、翌日を迎えた。
僕はいよいよ、香住さんと会えると思いながらも、香住さんの悲しむ姿を見てしまうのかと思うと胸が痛かった。
僕はバス停へ到着した。そこからは、透き通る海と白い砂浜が、香住さんと溶け込んでみえた。
僕の心はこれ以上ないくらいに高ぶった。
香住も思った。
私は健作さんと会えるけど、お父さんの事が少しでもわかるのかな……
それよりも、健作さんに会いたい。
もう、健作さんが待っているかもしれないから、早く行かないと。
そして、時は訪れた。
僕はバス停に向かう途中に美しい花が咲いていることに気づいた。
そして、花をプレゼントしようと摘んでいたのだった。
一つ一つの美しい花が香住さんのように思えた。
そして、停留所へと着いたのだった。
しかし、予定のバスの到着時刻にバスはこない。
どうして……
そんな、馬鹿な、出発予定より早く着いているのに、なぜバスはこない。
僕は待ち続けた。
香住は早くからバスで浜辺へ到着して待っていた。
しかし、健作はいっこうに来ない。
どうして……健作さん
診療所行きのバスはもう到着しているはずなのに、どうして
健作が待っていたバス停に、急遽、バスの運転手の斉藤が現れた。
「健作君、申し訳ない。診療所行きのバスは今日は出発できないかもしれない」
「え、どうしてですか?」
「バスのエンジンの不具合でな、申し訳ない」
「そんな……」
「誰かと待ち合わせしていたのか?」
「はい、あの、バスの中の少女と待ち合わせしていました」
「それは申し訳ないね。どこでだね?」
「浜辺の停留所から下ったところです」
「あの浜辺のバス停だな」
「申し訳ない、私が車で連れていきたいところだけど、復旧作業を急がなくていけなくて」
「わかりました。もういいです」
僕は復旧するのを待ち続けた。
しかし、いっこうに来ないために僕は浜辺まで歩くことにした。
約束していた、浜辺までは遠かったが僕は歩き続けた。
香住さんの事を思いながら……
香住は健作が現れない事もあったが、帰りの便の時刻が近づいていることに気づいた。
香住は健作に会いたかった。
待ち続けたが仕方なく、帰ったのだった。
はたして、健作と香住は再会できるのだろうか?
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