第5話 星が欲しい
「あの星が欲しいな」
夕暮れ時、隣を歩いていた妹がふとそんな事を言い始めた。
「なんだダジャレか?」
「違うよ。本当に星が欲しいの」
「……突然どうしたんだよ」
「なんかキラキラしてて綺麗だなって」
「それはそうだけどな……」
妹の言葉にため息をつく。当然、夜空に輝く星に手が届くわけもないし、星を売ってるわけもない。例え、星を売っていたとしても莫大な金が必要になるだろう。
「星、星なぁ……」
「やっぱりどうにもならないよね」
「まあな。けど、たしか新しい星が見つかったら、その人の名前がつくみたいなのは聞いた事がある気がする」
「え、ほんと!?」
妹は驚きで目を丸くする。
「ああ。だから、今すぐっていうのは難しいし、個人のにはならないけど、少なくとも名付けは出来るな」
「そっかぁ……よし、私これから星の研究をする! そして、いつか見つけたら私とお兄ちゃんの名前をつけるよ」
「え、俺の名前も?」
突然の言葉に俺が驚いていると、妹はニッコリと笑いながら頷いた。
「うんっ! だって、お兄ちゃんがそれを教えてくれたから出来た夢なんだもん。それだったらお兄ちゃんの名前だって入れたい」
「功績に対するリターンがかなり大きい気はするけど……まあいいか。その時を楽しみにしてるよ」
「うん、楽しみにしててね」
やる気満々な妹を前に俺はそれしか言えなかった。正直、うまく行くかといえば、妹の頑張りに加えて運の要素が確実に混じってくるので今の俺には何とも言えない。
ただ、新しく見つかった夢に向かって歩いていこうとする妹の姿はとても眩しく、そんな妹こそが星そのものなんじゃないかと思える程だった。
「……いつまでも輝かせとけよ、お前の中のその星を」
「え、何か言った?」
「何でもない。ほら、早く帰って母さん達にも知らせようぜ。母さん達、きっと驚くだろうからさ」
「うん!」
そうして帰りながら俺は星に願いをかけた。
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