第4話 短冊に込めた願い

 七夕の日、先生から短冊が配られた。どうやらせっかくの七夕だから何かお願い事を書いてみようという事らしく、よく見れば教室の隅には飾るための笹も用意されていた。



「願い事なんて書いたところで叶うわけないだろ。叶うならみんなやってるわけだし」

「あー、そう言うのよくないよ。せっかくやろうってなってるんだから、まずはやろうとしないと」

「うるさいなぁ……」



 隣の席の幼馴染みからの言葉にため息をつく。だけど、書かないと今日は帰れなそうだったため、俺はそれらしい事をパパッと書いて短冊を笹へと吊るした。


 見ると、幼馴染みも同じタイミングで笹に短冊を吊るしており、悪戯心が騒いだ俺は幼馴染みの短冊を覗こうとした。



「あ、ちょっと! 見ないでよ!」

「良いじゃん、別に。なんか変な事を書いたわけじゃないだろ?」

「そうだけど、見ちゃダメなの!」



 その幼馴染みの圧の強さに押されて俺は見るのを諦め、そのまま笹から離れた。


 放課後、どうにも幼馴染みが書いた短冊の内容が気になった俺はいつものように一緒に帰りながら幼馴染みに話しかけた。



「なあ、短冊になんて書いたんだよ」

「え?」

「さっきは見れなかったし、別に他の奴も聞いてないから教えろよ」

「えー……」



 幼馴染みは言いたくなさそうにしていたが、渋々といった様子で口を開いた。



「も、もっと君と一緒にいられたらって……」

「え……」

「ほ、ほら……大きくなった時にもしかしたらお互いに別々の道に行くかもしれないでしょ。でも、私としてはもっと一緒にいたいっていうか……」

「そ、それって……」



 幼馴染みの言葉を聞いて顔が熱くなってくるのを感じていると、同じく顔を赤くしていた幼馴染みは少し怒ったような顔をした。



「も、もうこの話は終わり! ほら、早く帰ろ!」

「え……あ、うん……」



 返事をした後、俺はいつもより少しだけ距離が縮まったのを感じながら家に向かって歩いた。

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