物理系魔法少女、勝利の確信
全身を包み込む炎が俺の身体を焼き尽くそうとする。
「らっ!」
力を込めて炎を分散させて、俺は地面に着地する。
死ぬかとと思ったぜ。
シロエさんがすぐさま駆けつけてくれて、俺に回復魔法を使ってくれる。
今でも空を飛んでいるドラゴン。
「やはり一筋縄ではいきませんわね」
「だな」
回復魔法が終わったので、ドラゴンから飛ばされるブレスを回避する。
どれだけ筋力の評価が高かろうと、攻撃が当たらなければ意味が無い。
攻撃を当てるためにぴょんぴょんジャンプしても、飛び回る相手に攻撃を当てるのは難しい。
ステッキをぶん投げても、予備動作を見られた時点で離れられるので当たらない。
ドラゴンと力比べしたら、多分俺の方が強いと思うけどな。
「考えてもしかたないか」
『考えてたの?!』
『結局思考を諦めたし』
『まだ大丈夫だ』
『ファイトファイト』
『頑張れ』
『まだ諦める時じゃない』
俺が再びドラゴンに接近しようとしたら、シロエさんの周囲から大量の闇が出て来る。
「いきますわよ」
シロエさんの大量の闇がドラゴンを拘束しようと触手のように伸びて行く。
それを回避していくドラゴンだが、その顔に余裕は無い。
「これだ」
俺は闇の方に向かって走り、中に侵入した。
何となく入れる気はしていたのだ。
後はその中を全力で泳いで、ドラゴンの方に向かう。
体全身に闇が絡み付くし、息ができない。視界は真っ白で前なんて当然見えない。
『えええええ!』
『魔法の中に突っ込んで行ったんだけど?』
『それってアリなの?』
『ダメージとか受けないのかな?』
『色々と大丈夫かな?』
『お、おう?』
「アカツキさん?!」
シロエさんの悲鳴に近い叫びが闇を伝って聞こえた。
そろそろ息が限界だけど、白い闇に影ができた事に気づいた。
ギリギリで間に合ったようだ。
「⋯⋯ふっ!」
足場が不安定な場所での殴り方は身体の捻りを利用するのだ。
影がある場所に向かって、回転を乗せた拳を突き出した。
周囲の視界が晴れる。
「ッ!」
いきなり現れた俺に驚くドラゴンだが、同時に強い衝撃により吹き飛ぶ。
ステッキをスケボーにして、それを足場にして蹴飛ばし、ドラゴンに向かって一気に接近する。
体勢を立て直したドラゴンに肉薄すると、奴が瞬時に爪を突き出すが、それを回避する。
腕を走って相手の顔面に向かう。
「ぬおっ」
腕を強く振るわれて空中に投げ出され、ブレスが飛んで来る。
手刀を作る。
「真っ二つじゃ!」
俺はブレスを手刀で切断し、戻していたステッキのスケボーを再び蹴り台にして、ジャンプする。
「ステッキの扱いが雑ですわ! ですが、中々に器用ですわね」
『褒めた!』
『ツッコミも忘れない』
『物は大切にしましょう』
『動画で毎回綺麗な状態でステッキを使っているアカツキ』
『衣装も汚れたところを見た事がない』
『アカツキの装備って実はかなり優秀?』
「オラッ!」
俺の突き出す拳を空中で回転して回避し、反撃の爪を殴って弾く。
弾かれた勢いを乗せた尻尾の攻撃をしっかりと見切り、足を合わせる。
「オラッ! 取ったぜ上空をよ!」
ドラコンの攻撃、俺のキックを合わせた跳躍だ。
ドラゴンの上を取ることができた。
「ふぅ」
ステッキに乗り落下しながら拳を強く固める。ドラゴンは回避のために飛ぶのではなく、俺に向かって高速で来る。
身体から火の粉が舞い、全身に炎を纏って巨大なドラゴンに化けた。
「必殺マジカルシリーズ」
身体を捻って回転させ、どんどんと回る。
「
高速の回転を乗せた俺の本気の殴りとドラゴンの全身をかけた攻撃。
どっちが強いかね。
『旋回バージョン!』
『取って付けたような新たな必殺技!』
『イケ!』
俺の拳と灼熱のドラゴンが合わさる。
炎の中に入り、ドラゴン本体へと俺の拳は到着した。
顔が変形する程のパンチ力で奴を地面まで突き飛ばし、加速して俺も向かう。
「追撃の手は止めない!」
ドラゴンはやはり耐えており、ゆっくりとだが立ち上がった。
俺を睨み、火球の準備を始める。
そんなドラコンの上に触手の闇が現れて、押し潰す。
暴れてすぐに逃げ出そうとするが、それを白い闇が許さない。
「アカツキさん! 今ですわ! 限界は近いですわよ!」
「ありがとうシロエさん!」
落下の勢いを最大限利用しろ。
回転を乗せろ。
「必殺マジカルシリーズ」
俺の足が強く輝き出す。
落下を最大限活かすなら、俺にとってはこれが一番だ。
「
ぶっ潰れろ。
「踵落とし!」
山をぶち砕く勢いの踵がドラゴンの顔面に炸裂した。
『お、やったか?』
『決まったな』
『鉱山が⋯⋯』
骨は砕け脳も潰れるだろう。
ドラゴンの硬く赤い鱗は俺のパワーの前では防御力ゼロに等しい。
血を吹き出し、完全に倒した。
「ふぅ。勝ちました!」
俺はカメラに向かってブイサインを送る。
『勝った!』
『知ってた』
『魔法の援護や利用がなければどうなっていた事か』
『迫力あったなぁ』
『今後は空を走る練習をしないとな』
『上のコメントはいつかやりそうだな』
シロエさんがとことこよって来る。
「勝利ですわね」
「ああ。余裕だぜ」
「あまり調子に乗っていると、厄介な事になりますわよ」
確かに。
とりあえず、ドロップアイテムを回収して帰るか。
多分あの辺に転がっていると思うけど⋯⋯あら?
「ドロップアイテムがありませんわね」
「そうだな」
なんで?
そう考えていると、言葉を出す間もない一瞬の時間で嫌な気配がする。
シロエさんを抱き抱えるようにして、俺はその攻撃に備える。
全身を包み込む巨大な爪が、俺達を吹き飛ばした。
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