物理系魔法少女、守られた宝箱にワクワクした

 落下をしてしまい、思考停止してしまったが、意識を切り替えて足を壁に突っ込んだ。


 下の方には鉄製の棘が少し光って見えた。


 あのまま落ちていたら串刺しだったろう。


 「まさかこんな巧妙な罠があるとは」


 『巧妙ってw』

 『罠探知系のスキルがなくても見分けられる』

 『素人でも色の違いって分かると思うんですが?』


 『お前ら! アカツキちゃんがそんな素人レベルだと思うなよ!』

 『まじで理解しろって。アカツキちゃんがそんな賢い訳ないだろ』

 『義務教育の敗北』


 なんか凄く罵倒されている気がする。いや、普通に罵倒だな。


 とりあえず登らないといけないので、足を埋めながら歩いて行く。


 ツルツルの壁で足を埋めながら歩くのは結構簡単だった。ザラザラして痛くないのはありがたい。


 『本当は滑って登れない仕様なのに』

 『力の前では小細工は無力なんだよ』

 『トラップの意味とは?』


 そこからさっきまでを巻き返すようにトラップが俺に襲いかかった。


 センサーに引っかかり、矢が正面から射出される。


 動体視力で矢を見切り、拳を固めて空気を殴ってできた衝撃波で薙ぎ払う。


 別に躱す必要ないからね。発動してしまったのだからしかたない。


 迷宮型の魅力である迷路だが、地図があてにならずイライラして来た。


 ボーナスエリアを発見するのが目標だし、その場所を目指して真っ直ぐ行くのはアリなのでは無いだろうか?


 魔物とは接敵してないけど、罠の感覚でなんもなく分かる。


 「壁をぶち破る!」


 俺は壁をかなり力を込めて殴って、トンネルを作り出した。


 壊れた壁はすぐさま修復を始めるので、すぐに通る。


 『壁貫通』

 『バグでは無い。ゴリ押しだ』

 『余計に迷子になるやつ』


 早速、魔物と接敵した。


 人型の牛の魔物であるミノタウロス。ファンタジー定番と言える。


 武器は石の斧なので、大した実力はないだろう。


 「ここは頭脳プレーいこうか」


 ミノタウロスの足元に色の変わった地面がある事に気づいた。


 あれは俺がたまたま引っかかってしまった落とし穴の罠である。


 あれをミノタウロスに踏まして、倒すのだ。


 魔石の回収は後からでも問題ない。


 さぁ、真っ直ぐ来い!


 しかし、俺の思惑とは全くの別に進み、ミノタウロスは色の変わった一部分をしっかりと避けて、迫って来る。


 きっと今のは偶然に踏まなかっただけだ。


 なので、背後に移動し、ジャンブでさらに距離を広げる。


 俺に振り返ったミノタウロスは咆哮をあげて、走って向かって来る。


 『トラップに当てようとしている?』

 『そんな事する? 魔物はトラップを回避できるのに?』

 『全く。アカツキちゃんがそんなの知る訳ないだろ』


 『アカツキちゃんを理解しているファンが一番侮辱している気がするw』

 『気のせいだろ』

 『はよ殴れ』


 ミノタウロスにトラップを踏ませようと悪戦苦闘して十分、諦めも肝心だと俺は分かった。


 なので、ミノタウロスと距離を離して、追いかけて来るタイミングを見計らい、地面を殴った。


 ギミックを起動させて落とせないのなら、俺が無理やり穴に落としてやれば良い。


 落とせればなんでも良いのだ。


 しかし、その殴った衝撃は俺の足元にも響き、範囲的に入っていたようで、ミノタウロスと一緒に落ちる。


 「落ちるのは、てめぇだ!」


 俺はミノタウロスを蹴飛ばして、脱出する。


 串刺しになったミノタウロスは魔石へと姿を変えたので、ゆっくりと降りる。


 手や足をめり込ませてゆっくりと降りるのだ。


 棘を軽く破壊しながら、魔石を回収して脱出する。


 『もうむちゃくちゃだよ』

 『これがアカツキクオリティ』

 『勝てば良かろうなのだ!』


 そろそろアイテム類を手に入れたいと思っていると、都合良く宝箱を発見した。


 進むと、宝箱前の天井がスロープのように開いて、中から巨大な球が転がって来る。


 これも典型的な罠だろう。


 大抵は後ろに走って逃げて、横の隙間とかに入ったりする物だ。


 だが、目の前に宝箱がいる今、後退の二文字は俺にない。


 何よりも、トラップが仕掛けられた宝箱は確実に良いのが眠っているはずだ。


 だから、転がって来る球体に向かって足を突き出した。


 『うん。知ってた』

 『まぁ破壊不可能じゃないからね』

 『道は開ける、これは常識』


 一つの球体を破壊すると、真上の天井が開いて重りが降って来る。


 「これはますます期待しちゃうなぁ!」


 拳を突き上げて破壊し、着地すると地面が開閉して落下するので、壁をよじ登って脱出しようとすると、今度は上から水が大量に落ちてくる。


 それらを耐えて前に進む。


 『まじで期待が膨らむな!』

 『いや、まだミミックの線は残ってる』

 『アカツキクオリティはどうなる⋯⋯』


 迫り来る壁、落ちてくる天井を破壊して、ようやく宝箱に手を伸ばせる場所まで来た。


 ゆっくりと手を出して、開けると、中から黒い何かが飛び出して来た。


 そいつは一度叫んでから、俺に牙を向けて迫って来る。


 『ゴーストミミックか!』

 『物理攻撃無効の厄介な奴があんなに厳重に守られていたのか』

 『なんか泣ける』


 頭を掴んで、地面に向かって叩き落とした。


 身体が粉々に粉砕して、ミミックは倒れた。ドロップアイテムは宝箱と魔石だ。


 空っぽの宝箱を持ち上げて、落とし穴に向かって本気でぶん投げた。


 『お、光った』

 『マジカルパワーや』

 『水しぶきが』


 少し濡れた身体で、壁を破壊して次に進もうと思う。

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