物理系魔法少女、久しぶりの迷宮型で配信する
秘書さんの転移があれば移動は一瞬で終わる。
紗奈ちゃんとギルドまでのたわいのない会話をしながらする散歩がなくなってしまうので、少し寂しい。
身体も完全に治ったし、感覚を忘れない為にも探索はしておきたい。
ギルドに転移したら、他の受付嬢さん達が驚くが、俺の変化にさらに驚く。
何よりも、配信者としての収益がかなり良いので、今の状態を継続、あるいは伸ばして行きたいのだ。
ユリアさんが迷宮型ダンジョンの配信を観たいと言って来たので、今日は迷宮型のダンジョンに行こうと思っている。
知り合いに、それも同じ家に住んでいる知人に配信者としての俺を知られている事への羞恥心は既に消えている。
むしろ視聴者の率直な意見を聞けるので、ありがたいくらいである。
「迷宮型ダンジョンで配信者に人気な場所がありますよ」
「そうなの?」
「はい。迷宮型の良さはもちろん、1から3層と分かれているんですが、前のダンジョン同様、下に行くと推奨レベルが上がるんですよ」
説明を受けた。
そのダンジョンの名前はラビリンス。
迷宮型の醍醐味であるトラップ、宝箱、モンスターハウスなどはもちろん、ラビリンスだけに存在する迷宮型の階層。
1層は推奨レベル4と順に続き、3層は推奨レベル6と言う事らしい。
配信者に人気なのは、通路が広いのと、ラビリンスはとても広いダンジョンだから。
広いから宝箱やトラップなどの数も他とは一線を抜いている。
純粋な探索の配信を楽しめる為に、人気なダンジョンだとか。
セーフゾーン、安全エリアもあるらしい。
「そこに行くよ」
ギルドの中までマスコミは居ないので、姿を晒していても問題ない。
「星夜さん」
紗奈ちゃんが俺の腕を引っ張り、耳打ちする。
「いってらっしゃい」
「⋯⋯なんでコソコソと?」
「特別感」
紗奈ちゃんがそれで良いのなら俺から言う事は何も無い。
ゲートを通って、ラビリンスの中へと入る。
石を削ってレンガのような長方形にして、それを壁にしたって感じの壁が続いている。
確かに天井は高いが、ジャンブしたら届かない距離では無い。
地面もしっかりと石材なので、しっかりとしている。
俺はこっちの方が、歩きやすいのでありがたい。
「それじゃ、配信始めますかね」
俺はライブを始めると、視聴者はどんどんと集まってくる。
今日のダンジョンについて軽く補足と説明をして、目標を話す。
「今回の目標は、ボーナスエリアの発見です!」
このダンジョンのトラップなどは日替わりらしくて、ダンジョンの地図はあるが、それらを示したモノはない。
地図はしっかりと持って来ている。
ボーナスエリアはその名の通り、ボーナスか多い。
高値で売れるアイテムが沢山眠っている空間らしいのだ。
そんなのどうしても欲しいに決まっている。
「それじゃ、行きましょう!」
『ひっさびさの迷宮型!』
『魔法少女コラボ以来だな!』
『今回も罠破壊かな?』
『障害は全て破壊する、これは常識』
『アカツキクオリティとも言える』
『ボーナスエリアの確率かなり低いけど、頑張れ』
早速地図を広げて、開けた空間を目指して歩き出す。
視聴者は俺が罠を破壊しながら進むと思っているだろう。だからその裏をかく。
俺は華麗にトラップを回避して、『アカツキスゲー』をするのだ。
最近自分でも受け入れつつあり、ファンの間で脳筋魔法少女とか物理系魔法少女とか言われているけど、頭脳的ってのも見せてやる。
そう思い、数十分歩いている。
トラップどころか、魔物にすら出会わない。
「あれ? この辺が開けた空間だと思うんだけどなぁ」
地図を広げてもう一度確認する。
新しく購入したドローンカメラは前のとは違い、グレードアップしている。
その分高かったけどね。
そのカメラが自動的に地図を写して、視聴者に伝える。
さらに、ホログラム映像として暇な時にコメントを投影してくれる親切設計だ。
『あれ? 変じゃね?』
『入口が上にあるってか文字が逆』
『これはあれだ。逆さまってやつだ』
『アカツキちゃん地図の使い方知ってる?』
『そこまで考える事ができないんだよ。察してやれよ』
『そうだぞ。あえて言わない事が優しさなんだ。この歳になっても、地図の見方を間違えているなんて、恥ずかしいんだからな!』
俺の羞恥心を刺激してくれる、ありがだーい言葉のコメントを受け流し、ゆっくりと地図を本来の形に戻した。
べ、別にわざとだし。
アカツキとしてのイメージを保つための演技だしっ!
「よーし行くぞ!」
それから数分後、俺は多分迷っている可能性がある。
なぜなら、途中で地図を変えて軌道修正せずに移動を再開してしまったからだ。
良く分からない方向に進んでしまい、今自分がどこに居るか分からない。
「ま、なんとかなるでしょ」
人間ポジティブが一番だって。
でも、そろそろトラップとかありそうだな。
『あ、その色が少し変わってるところ』
『落とし穴だぞー』
『気づいてねぇ』
『独り言でトラップを華麗に回避って歌ってたのに!』
『気づいてない恥を重ねているのに!』
『落ちたあああ!』
がちゃん、と一部の地面のブロックが下がり、俺の歩いていた場所が開いた。
いきなり開いて驚いたのもつかの間、身体は重力に従って落下して行く。
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