物理系魔法少女、匂いが気になった
ジャイアントフォレストから帰ろうとした途中、神器云々と何も分からない話をして来る三人グループと遭遇した。
俺は知らないと言っているが、信じてくれる事はなくて、一号二号と呼ばれるメイドと忍者っぽい二人に襲われている。
メイドの一号さんは刀を装備して、忍者の二号くんは双剣を装備して忍術を使って来る。
「さて、これならどうだ? 水遁」
「行きます」
水でオロチのようなモノを形成して迫って来る。
その水を足場にして一号さんも来る。
「円環」
水を蹴って肉薄して来る一号さんは流れるような斬撃の技術を披露してくれる。
円を描く斬撃。
狙いは首だとすぐに分かるのだが、違和感があるので集中していると、胴体の方に移動した。
違和感が消えので一瞬でステッキを間に入れて防ぐ。
「動体視力だけでここまでやるのですね。素晴らしいです」
そう言って俺を蹴飛ばして来た。
飛ばされた俺に迫って来る水のオロチの一頭。
「忍術って魔力使うのか?」
「オレの場合はな」
「そうか」
それが聞けて安心だ。
頭に手をそっと置いて、地面に押し当てて破壊した。
「何っ!」
「沈むどころか、押し潰した!」
強く地面を蹴ってジャンプして、他の頭を破壊していく。
「こんな雑の戦いをしている奴に、負けたくはねぇな」
「主人が目の前にいるのに、負けられない。それは当たり前⋯⋯」
「おい待て、何してる」
一号さんが二号くんを持ち上げて、俺に向かって投擲してきやがった。
そんな仲間想いの欠片が微塵も感じられない投げ方⋯⋯その上に一号さんは乗った。
「清龍突き」
スピードを先端に乗せた突きが脳天に向かって迫って来る。
「あっぶね!」
屈んで回避したら、膝が俺の顎に衝突した。脳ががくんと揺らされる。
「白炎」
白い炎を纏う剣で二号くんが袈裟斬りを俺に放つ。それはギリギリで防いだ。
ステッキのバットで防ぎ、反撃の蹴りをお見舞する。
「おっと。もう当たらねぇよ」
「そっか。じゃあ、これならどうだ!」
俺はバットをステッキに戻して適当に捨てて、両手で連打を放つ。
「単純単純!」
俺の連打を余裕な顔で紙一重で躱して来るが、徐々に焦り顔に変わっていく。
それはそうだろう。
俺の連打は徐々に加速していくのだから。
「そうやって避ける相手には、避けれないスピードで殴る、常識だろ!」
「それは、なかなか、できる事じゃ、ない! がっ」
一撃が腹に入ると、さらに連打を身体に叩き込む。
一旦連打を止めて、胸ぐらを掴み遠くにぶん投げて、巨木に激突させる。
「フゥ」
俺が投げた瞬間に一号さんが肉薄して来た。
刀の袈裟斬りを捻りながら回避し、捻った勢いを利用して拳を飛ばした。
それをバックステップで回避したので、メイド服を捕まえて引っ張った。
だが、それを脱ぎ捨てて脱出した。
何かの鎧でも仕込んでいるのかと思ったが、下着姿だった。メイド服を地面に落とすと、ずっしりとした音を出した。
メイド服が防具であり服装だったのだろう。
俺の魔法少女衣装みたいな? 今はパーカーたけど。
メイド服を捨てても尚、刀を収める様子はなく、敵意も何も無く俺に迫って来る。
「もう良い!」
そう言ったロリっ子の言葉を聞いて、一号さんは刀を鞘に収めて、メイド服を着た。
「神器を一回も使わなかったなお前! よかろう。神器を知らないと言う言葉を認めようぞ!」
「偉そうだな!」
それからゲートに向かいながら、なぜ俺を攻撃して来たのか質問した。
「神器の気配がするからだ。神器は神が創り出した武具でこの世界に落とされた⋯⋯我々はそれを回収しているのだ」
ロリっ子が俺の隣を歩き、他の二人は後ろを歩いている。
「神器ってのがなんなのか分かった。だけどどこに所持しているように見えるんだ?」
そう言うと、ロリっ子は俺を凝視する。
「ふむ。何か技とかないのか? 今までとは違う変化とか」
それを聞いて、一つだけ思い当たる事がある。
木の前に立って、俺は全力で拳を振るう。
「必殺マジカルシリーズ、
右手が眩しくなり、俺は力を緩めた。
木は少し破壊しただけで終わり、折れる事はなかった。
「変化って言ったらこれくらいか?」
「それが神器の力ぞ」
「はぁ? 本当に唐突に⋯⋯ああ。心当たりはあったわ」
がしゃどくろの時に幻覚だと決めつけていたガントレットが多分、この子が言う神器なのだろう。
それにステータスに起こっていた文字化け、それが神器によるモノなのだろう。
「⋯⋯本当に知らないのだな。謝罪する」
「そう」
「神器についてもう少し詳しく聞きたいか?」
「そりゃあね」
そうすると、一号さんがメモを渡してくれる。住所が書いてある。
「ここに来てくれ。我々の家ぞ。そこで詳しくゆっくり話そう。それと、今はその力を使っても身体に影響は無いから、安心してくれ」
⋯⋯え?
その言い方だと本当は身体に影響があるような言い方じゃないか。
別に自分が望んでなっている訳じゃないのに、危険性があるのはヤダな。
話は聞くべきか。
「他の人も連れて行って良い?」
「あまり他言はしたくないな。知らないに越した事は無いぞ。それを踏まえた上で良いと思うのならば、連れて来るが良い」
「そっか。じゃ、命懸けで言い訳して行くね」
「ん?」
ロリっ子の疑問の目を向けられた。
一号さんが俺に声をかけて来たので振り向く。
「先日は卵をお譲りいただきありがとうございました」
「あーいえいえ。⋯⋯ナンノコトデスカ?」
「一号、なんの話ぞ?」
「前に卵を切らして主人が駄々をこねた非常にダルい日がありましたね。その時に特売の卵を譲っていただいたのです」
「なるほどあの時の⋯⋯何がダルい日ぞ!」
それよりもなぜ、俺だと気づいた?
もう返事しちゃったし誤魔化す事は無理かもしれんけどさ。
嫌だな。このスキルがバレるの⋯⋯普通に嫌だ。
「分かった理由は匂いです。独特な匂いがしたので⋯⋯その話も今度にしましょうか」
俺って匂うのかな⋯⋯。
凹みながらゲートを通る。
「本当に男ぞ」
そう言えば、同じスーパーでであったし同じギルドか。
はは、まじで最悪。ロリっ子の不思議なモノを見る目を無視しながら、紗奈ちゃんの受け付けに向かった。
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