物理系魔法少女、武装した巨人に絶望を与えられた

 「にょほっ!」


 急いで回避したが、ドローンも踏まれる範囲だと一瞬で把握した。


 「ぬおおおお!」


 ドローンをキャッチして、脱出する。


 頭上から落下して来た巨人はかなりのひょろひょろだった⋯⋯身長は十メートルはある。


 「はんっ! がしゃどくろの方が十分怖いわ!」


 『単純な物理攻撃効かなかったしな』

 『やっぱ肉体があるのはイイネ!』

 『おっと基準が⋯⋯』


 しかしその巨人は踏めないと分かったら、木を猿のように登って、再び落下して来る。


 ちくしょうめ!


 「ドローンの設定範囲変えないと!」


 片手で持ちながら走って避ける。


 着地したタイミングで地を蹴って接近した。


 レベルアップで純粋なスピードは上がって、筋力の評価が一段階上がったのでさらに推進力が上がってる。


 その勢いを利用してパンチを繰り出す。


 「逃げんな!」


 木を登って、再び上に向かう巨人を俺は、木を走って追いかける。


 『良く落下しないな』

 『映像がグワングワンしてる』

 『どうやって走ってるの?』


 木に力を入れて食い込ませて走り、巨人に追いついた。


 驚いてるな。


 「オラッ!」


 相手の身体を蹴り上げて、片手で掴める部分を掴んで、地面に叩き落とした。


 木を強く蹴って加速し落下する。


 回転して遠心力を乗せて、踵を相手の腹に叩き落とした。


 地面を砕いて、身体をくの字に曲げた巨人はそれ以降動かなかった。


 「骨は折れて動けないけど、死ぬほどじゃないって感じか」


 巨人の頭に拳を落として倒した。早く楽にしてやらんとな。


 魔石だけを落としたので、回収してスマホで設定範囲をいじる。


 ドローンが離れたので、映像を確認する。


 『確認するための動きがかわいい』

 『年相応』

 『さっきまでフィジカルで攻撃してたけど』


 見にくいな。


 「近くだと戦闘に簡単に巻き込まれる、遠いと見にくいのか⋯⋯俺の買えるドローンの限界か」


 買ったばっかだし新しいのは買いたくないので⋯⋯まぁ頑張るか。


 いつもと同じ範囲にドローンを設定して、やばかったら回収しようと思う。


 ステッキを手に持って、森の中を歩く。


 「⋯⋯木が大きすぎて、全然進んでいる気がしない!」


 苛立ちのまま木を殴ったら⋯⋯へし折れた。


 丈夫だけど、かなり力を込めたら破壊できる事が分かった。


 俺の方に倒れて来たが、他の木が支えとなってくれたので問題はなかった。


 今後は気をつけようと思う。


 『相変わらず』

 『あ、うん』

 『素手で折るんか』


 新たな巨人を発見した。


 木に隠れて観察していると、棍棒を持っている事が分かった。


 武装した巨人か。紗奈ちゃんが言っていた事を思い出して、気を引きしめる。


 「棍棒相手なら何とかなるかな」


 『気をつけろよ〜(コメント見られてない)』

 『武技を扱える巨人だと厄介だよな』

 『それも全部拳で粉砕やろ』


 俺はさっきの巨人のように木に登って、上から奇襲をしかける。


 さっきの奴みたいに巨大じゃないから影で包み込めない。だから姿はバレない。


 最高の奇襲、その一撃をバットで果たす。


 言葉を出さず、殺意を持たず。


 つまりは、頭を空っぽにしてただ殴る、得意分野だぜ。


 「シャラっ!」


 重い一撃を相手の脳天にぶち当てた。


 フラフラと左右に揺れて、少し凹んだ頭になった巨人が俺の方を見る。


 怒りの目に変えて、鬼の形相の巨人は棍棒を振り上げて、叩き落として来た。


 対して俺は棍棒に向かって力強くジャンプして、バットを振るって砕いた。


 「棍棒とバット、木と金属、上なのは当然金属や!」


 そもそもそステッキは破壊不可能のチート性能だっての!


 『それ以外にも力があるよね』

 『力こそパワー』

 『うん。安心する』


 空中で身体を捻って回転し、バットを投げた。


 巨人はバットを手刀で弾いた。


 「ん?」


 一瞬手刀が輝いていた気がする。


 『武技持ちやったね』

 『しかも素手でもいけんのか』

 『これはこれは⋯⋯』


 『ま、でもアカツキだしな』

 『何とかなるな』

 『素手なら負けんだろ』


 巨人がゆらっと揺れて、間合いを一瞬で詰められた⋯⋯てか、相手のリーチが長い。


 流水のように鮮やかな手刀が俺のボディを正確に捉えた。


 「ッ!」


 「ぐぬぬ」


 一旦身体で受けて、手刀を受け止める。


 俺の視界に戻って来るステッキが目に入る。そこまで強く投げてないから大丈夫だ。


 力を込めて逃がさないようにして、口でバットをキャッチしてステッキの見た目に戻す。


 「ググググ!」


 全力で手を引っ張り上げて、巨人を持ち上げる。


 「チィ!」


 巨人は身体を丸めて足の裏をこちらに向け、叩き落とす。すぐさま反応する。


 今の俺が地面を蹴れば簡単にクレーターができ、その爆発力で生み出された推進力で回避する。


 「あっぶね」


 だが、相手は戦闘経験が豊富なのか、攻撃と攻撃の間の時間がとても短い。


 流れるようなスピーディの攻撃⋯⋯俺に迫って来るのはチョップだ。


 「そらっ!」


 腕を交差させて受け止める。全身にかかる重量感が潰そうとして来る。


 足が地面に沈み、俺の後ろ側はチョップの衝撃波で抉れている。


 「魔法少女の力は、巨人に負けねぇんだよ!」


 地面に足が沈んだ状態で無理やり動いて脱出し、最速で肉薄する。


 巨人は大きいから小回りが利かないので、俺の間合いに入れたら攻撃は難しいだろう。


 相手の顔面に俺が迫った。


 「お返しだ!」


 さらに上昇した俺の身体、相手の凹んだ頭上をしっかり捉えた。


 俺も手刀を作り、叩き落とす。チョップ返しだ。


 「必殺マジカルシリーズ、本気手刀打ちマジカルチョップ


 目を閉じたくなる程の眩しい光が俺の手を包み込んだ。


 完全に巨人を倒した。光は消えた。


 「嘘⋯⋯だろ」


 しかし、俺は絶望に叩き落とされた。


 粉々に粉砕されたドローンカメラの残骸。


 「はは。買ったばっか⋯⋯まだ一回しか使ってない。あははははははは。ちくしょうがああああああああああ!」

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