物理系魔法少女、眠気ある朝を迎える
一睡もできないまま、俺は天気の良い朝を迎えた。
朝の日差しに顔を照らされて、少しだけ呻きをあげて紗奈ちゃんはゆっくりと目を覚ます。
「あれ? 星夜さんがどうして私の部屋に⋯⋯まさか昨晩酔った勢いで!」
「なーにを考えているか分からんが、ここはリビングだぞ」
「そんな。初めてでどんな⋯⋯もしかしなくても酔ってここで寝てた?」
紗奈ちゃんは寝ぼけた頭から覚醒したのか、冷静に状況を分析してくれた。
洗顔をしてバッチリ目を覚ました紗奈ちゃんは早速、着替えて朝食を作り始めた。
俺も着替えて、洗濯機を起動する。
「何か手伝うよ」
「それじゃ⋯⋯」
紗奈ちゃんの指示の元、手伝っていると秘書さんとユリアさんが目覚めた。
四人で朝食を食べる。
「⋯⋯なんか慣れてしまったのに言うのもなんですが、お二人は手続きとか終わってるんですか?」
「私は終わってるよ」
「元々戸籍が無い」
一人だけものすごい発言をされたのだけど、誰も驚かないので俺も内心だけで驚いておく。
問題はありそうな気がするけど、大丈夫だろう。
眠気のある身体でダンジョンに潜るのは危険かもしれんが、魔法少女になったら大丈夫だ。
一回、紗奈ちゃんから離れてトイレに行こうと思い、魔法少女になったのだ。
そしたら余計に力を込められた⋯⋯抜け出せたかもしれんが、その場合かなりの力を入れる。
それが怖かったので、今朝まで我慢している。
その時に眠気が無くなった事に気づいたので、大丈夫だ。
「星夜さん。腰は大丈夫?」
「何とかね。紗奈ちゃんは?」
「問題は無いよ。⋯⋯強いて言えば、昨晩の事をあまり覚えてない事かな」
自分で作った氷像の溶けかけがベランダで放置されており、何をしていたのかと疑問に思っているようだ。
昨日の事を振り返りたくない俺達は一緒に顔を逸らした。
「本当に何が⋯⋯ちょっと、朝から何を飲もうとしているの」
秘書さんがいつの間にか手元に転移させていた、昨日の残りを飲もうとした。
俺もユリアさんもコップ一杯分だと言うのに、この人はさらに飲む気か。
てか、仕事前に飲むなよ。
「だ、大丈夫だよ! バレないから!」
「私がバラすから!」
「ちょっと! 小学生みたいにチクるのはナンセンスだよ」
「仕事前に飲むのもナンセンスだと思うけどね!」
一悶着ありながら、俺達は仕事場に向かう。
ユリアさんも今日は秘書さんの転移でどこかに向かった。
ギルドに到着し、裏に向かうのを見送ってから適当な椅子に座って待つ。
「おはよー」
「おはようございます」
ロリ職員さんって事は、田中君は関わって来る事はないだろう。
相変わらずどのタイミングで毎回俺の隣にいるのか、分からないけどね。
紗奈ちゃんが来るまでの間に雑談をして、受付に向かった。
「今日はどこに行くの?」
「昨日からの暇な時間に調べたんだけど⋯⋯ジャイアントフォレストってところ」
「また森?」
それは俺も思ったのだが、やっぱり気になるからね。
行ってみたいのだ。
巨人と呼ばれる魔物が蔓延る巨大な木が立ち並ぶ、広大な森。
昨日のダンジョンとは違って暗くは無いらしいが、とにかく木が大きいらしい。
「巨人は巨大な分、小回りは利かないよ。でも遅いって訳じゃないからな? 一歩が大きいし、力も強い。武装した巨人は特殊は力を使うらしいから気をつけて」
「りょーかい。何かレアなドロップアイテムとか、あったりする?」
「巨人の心臓かな? 薬の素材として使われたりするから、一つ十万はする」
「そっか。じゃあ行ってくる」
「うん。気をつけて」
俺達の会話を聞いていた他の受付達は、暖かな目を向けてきた。あの新人さんを除いて。
ゲートを通って、ジャイアントフォレストに入る。
どれくらいの巨木なのか実際は知らなかったが、これは確かに大きい。
まず絶対に日本には存在しない大きさだ⋯⋯世界にもないかもしれない。
その木くらいの巨大な人間が主な魔物だ。
「がしゃどくろとどっちが大きいんかね?」
そう呟きながら、配信をしようかと考える。
巨人と戦う魔法少女⋯⋯かなり撮影が難しそうだ。
だけどドローンカメラなら大丈夫か。
「アカツキの見た目に戻してっと」
プリセット機能が追加されたので、簡単に変身可能だ。
スマホを操作して、ライブを始める。
「三日ぶり? 朝早いけど、ライブ始めちゃいます! がしゃどくろ戦は何とか生き残ったよ〜」
同接の増えは緩やかだと思ったのだが、かなりの速度で上がっていく。
そのコメントにはクランへのスカウトやがしゃどくろについて聞きたいってコメントが多く寄せられていた。
「あーっと。雑談配信とかじゃないし、この生配信のコメントでスカウトも止めて欲しいかな? そう言うのはギルドを通してください。この動画のチャットはこの動画の内容だけにしてね」
うざいし面倒なので。
さて、俺は観光するような気持ちで歩き出した。一瞬で影に包まれる。
上を見上げると、巨大な何かが落下して来ていた。
『え、ここでライブすんの?』
『相手の攻撃範囲広いから、撮影機材が壊されやすいって有名なのに⋯⋯』
『何とかするだろ』
『こんな短期間にもう一回配信すんの? 偽物だな!』
『アカツキちゃんは、アカツキちゃんは、こんな短いスパンで生配信なんてしないんだもん!』
『レベルアップしてるよね? 楽しみ』
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