物理系魔法少女、コラボをする

 「今日はどこに行くの?」


 「今日はなぁ、破天荒の荒野って言うダンジョン」


 「そっか。推奨レベル3だからまぁ、良いかな? そこは天候がコロコロ変わるから、自然影響を防げるマントとかオススメだよ」


 「ありがと」


 天候が変わる程度なら魔法少女の衣装で対策可能なので、別に購入する必要は無いだろう。


 今回、このダンジョンに行く理由はルミナスさんとのコラボだ。


 結局受ける事にした。


 やっぱり、配信者として稼げるようになったからには、より多くの視聴者を確保したい。


 これが吉と出るか蛇と出るかは分からない。


 でも、やらないよりかはやるべきだろう。せっかくのお誘いだしね。


 「うわっ!」


 ダンジョンに入ってからそうそう、大嵐だ。


 魔法少女の衣装をレインコートに切り替えて少しでも雨粒を防ぐ。風で飛ばされる事は無いだろう。


 このダンジョンではゲート付近に探索者が自由に利用できるテントが設置されているので、その中に入る。


 元の姿に戻り、ルミナスさんを待つ事にする。慣れてしまったからなんだが、やっぱり魔法少女衣装はシュールだ。


 「あ、あの! アカツキさんですよね!」


 「違います」


 「あ、そうですか? すみません」


 他人に話しかけられた。俺の事を知っている人らしい。


 面倒なので適当にあしらってしまったが、後にこれで後悔しなければ良いけど。


 いや、そんなフラグっぽいのはやめておこう。


 数分待っていると、ルミナスさんがチャージライフルとは違う狙撃銃を担いでやって来た。


 「おはようございますアカツキさん」


 「おはようございます。それで、今日はどんな配信するんですか?」


 「はい。DMの方に送らせていただきましたが、今回はファイヤーモリと言う魔物の鱗回収ですね。晴れの時にのみ現れる魔物なので、晴れたら全力で探しましょう」


 「了解です」


 ライブが始まりルミナスさんが挨拶をしている。俺は特に準備する事は無い。


 ファイヤーモリと言うのは、簡単に言えば火を吐いく大きな赤いヤモリだ。


 ある程度のポイントは絞っているらしく、今の荒れた天気の中を移動する。


 ドローンカメラはそれでも無事にしっかりと撮影しているらしい。高性能だ。


 「こんな嵐の中、しっかりとスナイパーは機能するんですか?」


 先程借りた無線機で会話をする。


 「はい。環境の影響を受けない弾丸を放てる物ですので、大丈夫です!」


 「分かりました」


 俺にはコメントは見えない。ルミナスさんは時々コメントに返事をしている。


 どんな風に見てるのやら⋯⋯やっぱり隠している左目に何かあるのだろう。


 ただ俺が言えるのは、この中一人でブツブツ言っているのが恐怖である。


 ライブだからしかたないのだけど。


 『アカツキとコラボして得は?』

 『バズったからまた期待してるんでしょ』

 『今回もバズの予感がする』


 『あーならアンデッドか?』

 『最初のバズは脳筋魔法少女が相手の魔法を使ってネクロマンサーを倒す』

 『次にリッチを倒れるまで殴り倒した長期配信』


 『なんかアカツキのバズりにはアンデッドは不可欠なんだよ』

 『てか、トラップは破壊して進むけど、天候は耐えるんだな』

 『ダンジョンの天候はさすがに変えられない』


 『そもそもあまり気にしている様子なくね?』

 『嵐ごときに脳筋が止められるとでも?』

 『最高の盾と最高の狙撃者』


 「アカツキさん」


 「なんですか?」


 お、なんか風が弱まって来たな⋯⋯代わりに雨が強くなった。


 う、うるせぇ。


 「アンデッドに好かれてるんですか?」


 「どうでしょうね」


 アンデッドに好かれているとは考えたくないが、確かに結構会うと思う。


 きっと気のせいだろうけどね!


 数十分の歩を進めて、ポイントで一旦止まった。


 ルミナスさんが背負っていたリュックから、テントを取り出す。


 「何かできる事ありませんか?」


 「ボタン1つで可能なので大丈夫ですよ⋯⋯って、いつまで敬語なの?」


 「最初の挨拶が丁寧だったもんでね。変えるタイミングが分からなかった」


 後はこのテントに籠って、晴れになるのを待つと。


 「凄く地味だね」


 「しかたないよ」


 アラレが降り始めた。激しい音がテントの中を埋めつくして、揺らして来る。


 「アラレの時に外に出ると、普通に痛いんだよねぇ」


 遠い目をしてらっしゃる。これは何かあったな。


 ルミナスさんはコメントに対して相槌を打っている。


 文句とか言われてなければ良いけど。


 「アカツキさんって小さくなれるの?」


 「なれるよ」


 「見せて貰う事ってできる?」


 前は一時的にロリ化できるとアピールしている。それを崩す訳にはいかないだろう。


 変身できるが制限時間がある。


 再使用可能時間もある、そう言う事にしておこう。


 「もしかしたら使うもしれないので、無理かな? もしもの時はお見せしますよ」


 「そっか。僕も動画で見たけど、力とかは変わってなかったよね?」


 「ご視聴ありがとうございます」


 「いえいえ」


 なんだこの時間。


 お、アラレが止んだ。一回外に出て天気を確認する。


 真っ黒な雲だ。


 「なかなか晴れって来ないね」


 「しかたないね」


 一面には真っ平らな大地が広がっている。木も岩もない。


 障害物が一切ないのだ。


 「なんもねぇな」


 「天候がコロコロ変わるから、色々と変わったりするよ。運が良ければ一面真っ白になったり、海になったりする」


 「それ、運が良いのか?」

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