第5話 シノノメ アオイ

学校のシステムを破壊した俺たちは、幼馴染のミスイのもとに向かっていた。

AMANOJAKUが言うには、彼女の死が俺の能力を暴発させるトリガーになるらしい。

電車で隣町のミスイの学校までは、10分。

緊張感がはしる。

「実験が中止になるから、俺が殺されるんだろ」

「じゃ、なんでミスイが狙われているんだ」

(数百人の研究員がいるんだ、全会一致で研究の中止に納得すると思うか)

(まぁ全員に情報が共有されているとは限らない)

(上層部にいる人間だろうな)

「そういえば、学校の研究所にあったデータのコピーを確認させてくれ」

「もしかしたら何か手がかりになるかもしれない」

そういうと、スマホにデータファイルが追加された。

ハッキングソフト「鬼」は特殊なサーバーに経由されるらしく、膨大なデータの保存と処理を可能にする。

俺は工作員一覧表というファイルを見つけた。

「学校の教師、コンビニの店員、市の職員、こんなにも見られながら生活していたのか」

(他人には相談できない、もちろん知り合いでさえもな)

ある一人の顔写真を確認し、背筋に冷気が張りつめた。

「な、なんでシノノメがいるんだ」

「そんなのって..」

俺の背中に電流がはしった。

「AMANOJAKU!シノノメの現在地を調べてくれ」

(電話から位置情報を割り出せるかもしれない)

「たしかシノノメはミホって子を探していた」

実穂ミスイ、普通この字を見ればミホと読んでしまう」

(まて、ここで電話をしたら目立つぞ)

(今頃、血眼になってお前を探しているだろう)

確かにどこに工作員が紛れていてもおかしくない。

ここは一旦降りた方が良さそうだ。

「あっ」

俺は一つの妙案をひらめいた。

「一応聞きたいんだが」

「AMANOJAKUの力で人工衛星にアクセスできないのか」

(強力なセキュリティを突破するのにはそれなの時間がかかる)

(いいから早く降りて、電話かけるぞ)

「お、おう」

星歌の丘駅で降りると、そこにはトダがいた。

リストにトダの顔はなかった。

コイツは信用できる。

『ミカフツじゃん、何急いでいるんだよ』

「ちょっとな」

『そうか、じゃまたな』

俺は電話をかけようとしたがスマホがついに壊れてしまっていた。

「トダ!少しスマホ貸してくれないか」

『それは流石に困るんだけどな』

「一生のお願いだ」

『わかったって、ほら』

スマホとポケットWi-Fiだ。

『俺今月使いすぎて、Wi-Fiないと使えないからもってけよ』

「ありがとう」

『まったく何企んでんだか』

『あ、Suicaで来たんだった、わりぃミカフツってあれ』

『あいつ早すぎだろ、どーしよーおー』

どうするかな、駅員に事情を説明しても無理だよな。

こんな時に知り合いに都合よく会えないかなー

「こんなところでしゃがみ込んでどうしたの」

『えっ』

一方ミカフツはシノノメに電話をかけていた。

「つ、繋がらない」

(これじゃあ場所は特定できないな)

(お前が逃げ出したことをシノノメは知っているはずだ)

(お前に連絡がないなら、敵としてみてもいいだろう)

「悔しいけど認めざるえないよ」

あれだけ青かった空が赤く赤く染められてく。

茜色の空に一本の光の筋が見えた気がした。

悠長にしている場合じゃない、時間は刻々と過ぎてゆく。

「ミスイ..無事でいてくれ」


午後19時30分

「ミカフツの奴、家から一歩も出るななんて一体なに考えてんの」

ピンポーン

「あ、やっときたミカフツ」

私は新しく買ったばかりスリッパを居間の収納ケースから出し、玄関の隅に置いた。

一応ドアののぞき穴から外を見た。

「あれ、誰もいないなー」

「もうほんとムカつくわー」

外を確認しようとドアを開けた。

その時だった。

ピピピピピピと激しい警報音が鳴り響き、驚いて転倒してしまった。

「痛っ!もうなに!うるせーんだよ!」

「って何よこれ」

9..8..7..

「これは爆弾!私を殺すつもりなの?」

すでにカウントダウンは始まっていた。

逃げようとしても体が言うことを聞かない。

「私にはまだやり残した青春があるのよ。それを取り上げるっていうのなら私は、

 地面に這いつくばってもどこの誰もわからないあんたら全員ぶっ壊してやる」

2..1..

『チェックメイトだね』

ドカーンと大きな音ともに黒煙が空にはいあがる。

パチパチパチパチと木材が焼けていく。

燃え盛る真っ赤な炎は、ある一人の怪物をとりこにさせる。















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AMANOJAKU @Ricorudo

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