第4話 ホンブ
「今日は学校は休みのはず、なにをするんだよ」
(とりあえず研究室の本部をつぶさないとな)
「それってこの高校一帯がグル..俺は常に監視されていたっ!」
校門の防犯カメラは全部で5つ、簡単には突破はできない。
「AMANOJAKU聞いてるか」
「お前仮にもウイルスだろ、セキュリティを壊すことは」
(しゃーねえ、スマホをだせ)
スマホを取り出すと、アップデートがすでに始まっていた。
ハッキングソフト「鬼」という名で白黒のシンプルなデザインが、
ダウンロードされていた。
(それを使え、半径10メートル以内の電子機器はショートする。)
「よし、カメラは止まった」
塀を乗り越え、中に入った。
(中庭から地下に行ける、走れ)
ブウィーーーン
無数のドローンが上空から迫ってくる。
「ほんと、ただの高校には見えなくなってきたな」
目の前には2年生棟の校舎がある。
ひとまず身を隠すか。
(いや、その悠長にしている時間はないぞ)
「わかっているけど、中庭は職員棟の隣だ」
「ドローンを引き付けていたままでは、ばれてしまう」
(理解した、放送室に迎え)
(隠密行動は無理そうだからな、派手に行くぞ)
スライディングでドローンをかわし、学校のシンボル像の握っていた刀をぶんどった。
刀をバットのように振り下ろし中央棟のドアを壊した。
「よし、放送室は3階だ」
階段を上ろうとした瞬間
ガゴンッ
何かで後頭部を殴られ、気を失ってしまった。
目を覚ますと手足を拘束され、スマホを破壊されていた。
白服の人が近づいてきた。
『おや、お目覚めかな』
この声..どこかで聞いたことが。
ゆっくりと顔を上げる。
「か、かなもりさん..」
「なぜこんなとこに、まさか君を巻き込んで」
『違うわ、私がこの研究の最高責任者よ』
「そ、そんな..嘘だと言ってくれ」
AMANOJAKUが言っていたことが脳裏によぎる。
今まで殺されなかったこと、知ったとこで何もできないこと。
「俺を監視するために使づいてきたのか、答えてくれ」
『私がこの研究の引継ぎをしたのは、高校生になってからなの』
『それまでは私の父が研究していたの』
『監視はあなたが生まれた時から既に始まっていたのよ』
俺はこの現実を目の当たりにして動揺を隠せなかった。
今更だ、あの学校生活に未練はない。
そう自分に言い聞かせていたものの、後悔が押し寄せてくる。
その時、理屈は分からないがAMANOJAKUのハッキングソフトから発せられている電波と思われるものが見えていた。
スマートフォンは割られていたものの、アプリは起動できているようだ。
(覚醒の準備が進んできているようだな、成長が早く安心した)
俺の手錠のカギが開錠されるまで、3分。
可視化された電波から内部の様々なデータを閲覧することが可能になっていた。
『そろそろ私は行くから、おとなしくそこで待っていなさい』
「どこに行くんだっ‼」
『あなたの処分を決めるのよ』
『最近のあなたのSELFは危険値まで上昇しつつあるの』
「SELFってなん..」
彼女が振り返ることはなく、金庫のような重い扉が閉ざされた。
「クソ、AMANOJAKUとSELFは共鳴しているとしたら」
「俺が今からしようとしていることは、この町に害を..」
「おい、AMANOJAKU何かわからないのか」
(俺はお前の意識の中でずっと見てきた)
(この研究のことを知っているから、ミカフツ..お前を意図的に操作したんだ)
(本部に行くようにいったのも、後悔を生み出すため)
「いいさそんなことは今はもう気にしてない、教えてくれ」
(お前は並行世界にいるお前自身と繋がることができる能力がある)
「ど、どういうことなんだ」
(お前は莫大な熱量を生み出し、道というネットワークを形成する)
(それぞれの世界の行き来を可能にするんだ)
「並行世界はそもそも存在するのか」
そんなファンタジーのような話をされてもあまりピンとこなかった。
(あくまで理論上、熱量がそれだけ生み出すことができるっていう話だ)
カチっ
いつの間にか3分が経ち、手錠が外れた。
「続きはあとだ、今はここから脱出しよう」
(いや、その前に放送室に迎え)
(この施設を破壊する電波を学校中に流すぞ)
「ああ、わかった」
俺はスマホを手に取り、走り出した。
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