第3話 ウイルス

 日が沈み、あたりが暗くなってきた。

 車通りもなく、人ひとり見かけられない。

「僕の考えがあっているならこの声の正体は!」

「僕にしか聞こえることのない、もう一人の自分の声だ!」

 珍しく声を荒げた。

(まぁ半分正解ってとこだな、上出来だ)

 僕の耳元でささやく。

 もう夏だというのに関わらず、辺り一面に冷気が満ちた気がした。

 思わず背筋がゾッとしてしまった。

「一体何が起きたのか説明してくれ、お前は誰だっ!」

(そう焦るなって、俺たちは運命共同体なんだからな)

「なっ...なんだってー!」

(簡単に言えば俺は「心鬼しんき」っていうウイルスの一種に過ぎない)

(心鬼は宿主から栄養となる感情を喰らって力をつける)

「じゃあ今までの胸の痛みはお前だったのか」

(俺はAMANOJAKU《後悔の鬼》だからな、ここまで成長できたのはミカフツのおかげだ)

「僕は鬼を育てるためにこんな人生を歩まされていたのか」

「出てけよ..僕の中から出てけよ!」

 今までの後悔が波のように一気にあふれ出し、理性がふっ切れてしまった。

「ゔっゔっ、ゔああああああああ!」

「あああああああああああああああああ!」

(やっぱしこうなるか、でもな時間がないんだよ)

(悪く思うなよ)

 パチンッ

 目の前が真っ暗になった。


 翌朝

僕は自室のベットで寝ていた。

頭がギシギシと痛む。

「夢だったのか..それにしては記憶が鮮明と蘇る」

「あれは一体何だったのだろう、日々のストレスが見せた幻覚か」

(いや、全部現実だ)

(今日は落ち着いて聞けよ)

「ああ、分かった」

(簡単に言うとお前は命を狙われているんだよ)

(いつ殺されたっておかしいことはない)

(だからなあ)

「ちょっと待て、何の話だ」

「俺は誰に命を狙われてるっていうんだ!」

(俺とお前を知っている組織があるだろう)

「子守精神病院...」

「嘘だ、そんなこと信じられるわけないだろ」

「大体何のために俺の命を」

(そりゃあ科学者なんぞ未知のウイルスを汚い手を使っても解明したいと思うだろ)

(しかも急に喋りだすようになるんだぜ)

「じゃなんで今まで殺されずにすんでいたんだ」

(それはなぁ、フハハハハハハハハハハ)

「何がおかしんだ」

(じきに解ること、今知ったとこでお前は何にもできないしな)

こいつは人を弄ぶのが好きなようで、感情をコントロールするのに必死だった。

「俺はこれから何をしたらいいんだ」

「どうすれば自由になれる」

(この俺を覚醒させてしまえばいいのさ)

「覚醒って」

(いいから落ち着いて聞けよ)

(お前の後悔のエネルギーが俺を実体化させるんだよ)

(そしたら俺もお前も自由だ)

「実体化だと..そんなことしたら」

(俺はこの世界を滅ぼしてしまう..なんて詰まらないこと考えるなよ)

「約束してくれ、誰も傷つけないと」

(いいだろう、覚醒したら端からこの世界に用はない)

(時間は限られている、早速だが学校に行くぞ)

「おう、わかった」






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