第2話 イヘン

バンッ‼

「わっ!」

少しボーとしていたせいか、背後にいたシノノメに気付かなかった。

「おはようーミカフツ、最近元気が良さそうだけどなんかあった?」

「まぁ色々あったんだ、今年は去年より出だしが好調なんだ」

シノノメは勘が鋭い。

いや、僕が顔に出やすいだけかもしれないけど噓はつけない。

ここは上手く濁すことが最善手だと考えよう。

「あのさ、ミカフツのクラスに「ミホ」って子いなかった?」

「んー聞いたことないな」

「わかった、ありがとうね」

「そのミホって子となんかあったのか?」

「うんん、何でもない」

明らかに怪しかったが事が重そうだったからこれ以上は追求しなかった。

学校に着いたあともシノノメは浮かない顔をしていた。

「おはようミカフツくん、どうしたの難しい顔しちゃって」

「ごめん少し考えごとをしていたんだ、早く文化祭の企画書かないとな」

カナモリさんとクラス委員になってから既に2ヶ月が経ち、

大分気軽に話せるようになった。

彼女は学校一の美少女で、肌は雪のように白く、黒髪は鏡のように光を反射する。

そんな彼女と話せるのもクラス委員になったおかげだった。

彼女のそばに居られる一瞬一瞬を無駄にしないように必死だった。

しかしながら、うまく事は運ばなかった。

あるとき彼女からLINEで

「もし明日予定が空いてたら、私に付き合ってくれないかな」と連絡があった。

「や..やった、やったー」

思わず口に出して喜んだ。

彼女に返事を送ろうとしたときだった、またあの痛みが蘇った。

「うっ..ぐぐぐ!」

「こんなチャンス逃がせられない」

僕は涙が止まらなかった。

「明日は朝から行くとこがあるんだ」

「ごめん」

それから彼女に休日誘われることはなく、この上なく後悔していた。

この病をどうにかしなければいけない。

「ミカフツくん、ねぇ聞いてる?」

「あ、ごめん」

「もーちゃんとしてよね、頼りにしてるんだから」

「ありがとう、気を付けるよ」

そういって僕は席を立ち、窓を見つめた。

彼女の優しさは僕には眩しすぎた。


放課後

「遅ーい‼」

僕はパシリに使わされていた。

今どきコンビニに焼きそばパンを買いに行かせるなんて聞いたことがない。

「はい、これで帰っていいか」

「なんだその口の利き方は、なめてんじゃねーぞ」

「ミスイ リナ」は幼馴染で、隣町の高校に通っている。

高校デビューをきっかけにグレテしまった。

たまに僕の高校に寄っては、パシリにしてくる。

正直なところリナの真意は分からない。

「早く家に帰ろよ」

「うるせぇ!」

僕は茜色の空に照らされたアスファルトの道路を見つめて帰った。

そのときだ。

激しい胸の痛みが僕を襲う。

「おかしい、なぜこのタイミングで」

「何をすればいいんだ!、僕にどうしろと言うんだ!」

「うがっ」

助けを求めようと、人ひとりとこの場にいない。

僕は死んでしまうのか。

(おいお前、俺の声が聞こえるよな)

「こ..こんなこと、ありえるのか」










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