AMANOJAKU
@Ricorudo
第1話 サジ ミカフツ
「私と付き合ってみない。ねぇ、ミカフツくん」
「えっ、あの... は... は... 」
ドグン ! ドグン!ドグン!
「...ごめん、カナモリさん」
高校生の夏、僕は彼女にこたえることが出来なかった。
僕の心には「AMANOJAKU」がいた。
幸せになるためには、正直に生きることが大事かもしれない。
しかしこの世界には、そのことを理解しているうえで
真逆の行動をしてしまう者がいた。
彼は心の中に「AMANOJAKU」を飼い、
何気ない日常に後悔を重ね、
生きていかなければならなかった。
2023年春
「おっはよー なんだ浮かない顔して、ゲームのし過ぎなんじゃないの」
こいつは中学時代からの友人「シノノメ」
何かと相談に乗ってもらうことが多い、一応 感謝しているが正直うざい。
「いつもと変わらん平常運転だよ」
学校にはいつも二人で行っているが、会話が弾まないのは珍しくない。
コンクリートの道路を見つめてるのが大半だ。
気づけば学校に着いていた。
シノノメとは別のクラスだから、僕は駆け足で教室に向かう。
「おいミカフツ、なんか委員会はいんのか?」
教室に入った瞬間に声をかけたコイツは「トダ」
クラスで既にカースト上位に食い込んでいるのに関わらず、やたらと絡んでくる。
まぁそのおかげで孤独にならずに済んでいるのだが。
「特にやる気はないよ」
そういって一番後ろの窓際の席に座る。
キーンコーンカーンコーン
「みんな席につけ、 出席をとるぞ」
嗚呼...また一日が始まる。
なんだかそれだけで憂鬱な気分になる。
そう思いながら深いため息をついた。
一時間後
「委員会をこれから決める、 早速だがクラス委員長やりたい奴はいるか」
教室は静まりかえった、まるで鳥のさえずりに耳を傾けるように。
みんな分かっているんだ、どんなに面倒くさいのか。
「誰かが手を挙げるまで粘ってやるからな」と思った時だった。
ドグン!ドグン!
「うっ... 」
まただ、胸を激しく圧迫する強い痛み。
生まれてからずっと一緒だ。
自分が言いたくないことを強制してくる。
病院の検査では「精神的な問題かもしれない」と言われたが、
明らかに何かが作用している。
「クソ!」
僕は手を挙げた。
「佐士、やってくれるのか」
担任がそう言うと、教室に拍手が起きた。
「はぁー、やっと治まった」
僕は胸をなでおろし、一息ついた。
「それじゃあ次、 副委員長やってくれる奴いるか」
スッ
前の方で手が上がると、みんなの視線が集まった。
「私がやります 先生」
透き通った声が教室に響き渡る。
窓から入った光を浴び、神々しく見えた。
僕は一秒たりともその姿を見逃すことはなかった。
「じゃあ佐士と金森、 続きを仕切ってくれ」
そういって担任は教室から出ていく。
大役を任されて鬱気味だった反面、気体していたのだった。
「カナモリ」さんと友達になれるかもしれないことを。
「よろしくね!ミカフツくん」
僕は胸が高まって言葉に詰まった。
息を整え、あらためて言った。
「よっ..よろしく」と
感動に浸る暇もなく、二人でその場を仕切った。
今思えば全てはここから始まっていた。
そう気づくのはまだ先の話だが。
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