第3話

しばらく経った日。


明日からは、2日連続の休みだ。

準備はしてあるが、もう一度確認しておく。


……うん。大丈夫だ。念の為に使うようの防犯ブザーも用意した。何かあったら大変だからだ。


さて、風呂に入り身支度を済ませて早めに寝よう。


◆◆◆◆


次の日。


早朝4:00。準備完了。朝食も済ませてある。玄関から出て鍵をかけてから、庭に回る。


我が家は戸建ての一軒家で両親と共に私が子供の時から住んでいるのだが、今は私の一人暮らし状態だ。

自営業の両親が仕事の関係上、海外に移住したせいだ。だが、名義は父親のため、大晦日やお盆の他にもたまに帰ってくる。


庭はそこまで広くはない。13畳くらいだったはずだ。昔、犬を飼っていた名残で庭には犬小屋が1つ残っている。他にも物干し竿や自然に生えてきた漆の木など様々なものがある。


さて、私がなぜ庭に来たのか。チケットを燃やすためだ。生憎、家にはシュレッダーが無かったので、庭にある、コンクリートブロックで作ったバーベキュー用の小さい竈疑きの炭置きで燃やすことにした。


最終チェック。


セーフティベルトok。それを隠すジャケットok。斜め掛けのバッグと暗証番号式の南京錠ok。スマホもok。モバイルバッテリーもok。自転車用だがプロテクターもok。その他色々もok。


よし。行こう。


電子ライターの着火棒を使い、気を付けてチケットの端に火を点ける。


チケットは簡単に燃え、徐々に火を強めていく。


火を点けてから1分程度だろうか。チケットが燃えカスとなった瞬間、自身の真横20cm先に扉がブォンという音と共に出現した。


見た目はシックな感じの木製の扉だ。上品になったどこでもドアとイメージをするとわかりやすいだろう。


「わぉ。これは驚きだ。本当に唐突に出現した。」


「ふぅ。」


軽く深呼吸をする。


この扉の先は異世界。完全に未知の場所。気を引き締めて行こう。


丸いドアノブに手を掛ける。回す。


カチャ


固定が取れた音がした。引けば開く。


「ふぅ。」


もう一度軽く深呼吸する。


心臓が走る。少し呼吸が浅くなっている。緊張だ。

じわりと出てきた手汗で滑らないようにしっかりとノブを握り直し、扉を開けた。


「え?」


扉の先の風景は、今さっきと変わらない自宅の庭の風景だ。


なんだコレ。騙された?特殊能力は手に入れたが、只のこれだけか?


扉は開けたまま扉の周りを一周する。


かわりはない。ただの扉だ。


試しに扉を潜ってみる。


その瞬間、風景は変化した。


「あぁ、本当だった。」


後ろに振り返る。扉はない。代わりに変化した風景が広がっている。


疎らにある低木、地面には短い青草のカーペット。更に奥には頂の白い山岳。


空を見るに今はおそらく冬。しかし温暖な風が吹き心地が良い。


本当に異世界へ来た。感動がある。とても気分が踊る。


……そんな事を考えている時ではない。


ここは何処だ。

人の街か集落か何かは近いのか?

何事もなければ2日は生きれるだろうが何かあったら大変だ。探そう。


どっちだ。山から離れた場所に街を作っているのか、近い場所に作っているのか。


ニブイチである。


どうする。どうする。ここはそう。あれだ。

なにか選択があるのならば多くの人がコレを使ってきた伝統的なアレをしよう。


「どーちーらーにーしーよーうーかーなーてーんーのーかーみーさーまーのーいーうーとーおーりー!!」


決まった。山から離れる方向へ行こう。


さて、野生動物に襲われることだけは勘弁だな。


山とは反対。遠くに湖が見える方向へ歩みを進めていく。


水があるなら人の集まりはありそうだが……居ることを願おう。

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