第10話 炎上暴走特急④

 時は少し遡り、ジェイムズたちのいるモスクワ行きの特急にて。

「しっかし…マスターを倒したはいいものの、問題はここからだな……。この列車をどうするか、だ」ジェイムズが言う。

「それよりもよォ…このをどうにかするのが先じゃないのか?乗客に見られて変に疑いかけられても困るしよォ、いっその事武器にするとか…」

 カークは運転席にある、変わり果てた運転手の骸を指さし言った。

「お前それは流石に倫理観トビすぎじゃあないか?」ラーズが口を刺す。

「じゃあ誰かなんか方法を考えて見ろよ…」

 文句を垂れるカークに、ロバートが提案する。

「なら僕がどかしますよ…ホワイト・ライダー!」

 ロバートの体から飛び出した悪魔が運転手の骸と辺りに飛び散った血痕を操り、運転フロアの隅に座らせた。

「ていうか思い出したんですけど、カークさんお酒飲んでませんでした?飲酒運転は流石にどうかと…」

「じゃあお前、運転免許持ってんのか?」

「未成年ですから無いですけどそれはカークさんも同じですよねぇ!?」

「免許無いんじゃ駄目だな、運転は任せられない……なぁジェイムズ、ところでこれどうやって運転するんだ?」

「最低な先輩ですねぇ、未成年に運転させるなんて!ホワイト・ライダー!」

「自分からやってんじゃねぇか…」

「最低な先輩だとよ!最低な先輩だとよ!おい聞いてんのか先輩?ガハハハハ!!」

 ジェイムズがカークをからかうように言った。

「そんな一面あったんだな、お前…」

 この場を占めたのはラーズであった。

 そうしてジェイムズ一行は、主にロバートの尽力により、無事にモスクワへと辿り着いた。

 その日はひとまず駅の近くのホテルに泊まり、疲れを取ろうと言うのが、一行の相違であった。

 道すがらにロバートが独り言の様に尋ねる。

「そういえば楽々駅出れちゃいましたけど、意外とバレないもんなんですね」

「俺たちが今着ているのは何だ?」

 ジェイムズの問いに答える。

「教会の…部隊の制服ですけど…」

「それが答えだ…一通りのメディアも見てみたが、どうも何も報道されてないらしいな…恐らく教会はただのハッタリで――――――」

「もっとデカイ組織が裏にいる、てことか…」

「ビンゴ」

 ラーズの言葉に対し、はっきりとジェイムズは答えた。


 17時41分、ジェイムズ一行はホテルに到着。


 17時47分、ジェイムズが発言。


「じゃあ、8時になったら夕食を食べる為に1階のレストランに集合するから、それまで各自ゆっくり休んでおけ…明日は早いからな」


 その後各自、自室へ。


 19時52分、ジェイムズとラーズがレストランに到着。


 19時58分、カーク到着。


 20時5分、ロバートが不在だったが、そのうち来るだろうと一行は予測。食事開始。


 20時16分、ロバートはまだ到着せず。カークが疑問に思ったので一行がロバートの部屋を訪ねドアを叩くも応答無し。部屋の鍵が開いていたので一行が部屋に入るも、ロバートは不在。


 20時22分、ホテルのフロントにて。


「すいません…これくらいの背丈で、金髪でアルビノの、17、8歳ぐらいの人、見ませんでしたか…?」

 ジェイムズが自らの肩の少し下を手で示しながら尋ねた。


「えっとォー、その人かどうかは分からないんですが…似たような人がフードを被った男に担がれながらホテルから出ましたね…大体20分前ぐらいかと」


 そう言われるや否や、すぐさまホテルを飛び出し、ロバートを捜索し始めた。


 そうして。


 20時47分、一行は左目から大量に出血したロバートの遺体を発見。体の所々が凍っていた為、一目瞭然であった。そしてその傍らに、一人の男が立っていた――――――。


「デイブッ!何やってんだテメェッ!」

 カークの怒号が響き渡る。

だなァーカーク…俺はショックなんだぜ、まさか『これ』が俺が手放した『支配』を受け継いだ奴だなんてよォー…お前らもすっかり堕ちちまったな…」

「デッッイッッブゥゥゥゥゥゥ!!!!!これ以上は許してなるものかァーッ!ペイル・ライダァーッ!!」

 その手がデイブに触れようとした、その時。

「メカニック・ペイル…」

 その悪魔は、全身が金属製のロボットの様な光沢を放つ以外は、ジェイムズの悪魔と同じ姿であった。

「馬鹿なッ…俺は『触れている』のだぞ…それなのに…それなのに何故!死なないッ!?」

「そういう『能力』だから、だな…具体的には触れた物を強制的ににする能力、それが『メカニック・ペイル』ッ!」

 デイブはそっと、ジェイムズに向けて言い放った。












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