第9話 炎上暴走特急③
「
爆発した酒瓶の破片と共に、炎が舞う。その勢いは、爆発するごとに強くなり、周りの炎も勢いを強める。やがてロバートは自身の本体を守ることにかかりっきりとなり、マスターへの対処が完全に目的外のものとなっていた。
そうして、事態は起きた。起きてしまった。
炎が燃え移った酒瓶の破片、それがバーの後部車両に続く扉の窓を割り、破片は後部車両、つまり客席の床に落ち、火柱を立てた。客席は恐怖と混乱に包まれ、阿鼻叫喚の叫び声が響き渡った。
そこの車両にいた乗客はパニックを起こし、自分たちのよりも後部の車両に逃げ込んだ。当然逃げ込んだ先の車両の乗客も、同じようにした。たちまち車内は地獄と化した。
「
マスターがロバートを茶化す様に言う。
「いくら俺たちを殺せと言う教会の命令だからってこんな事……お前、自分が何をしたのか分かっているのかッ!」
「私は教会の命令を守っただけですが……しかし自分が何をしたか、は分かってますよ。一般的には『テロ行為』と呼ばれる行為ですよね」
「…ここまでしなくっても、良かったんじゃ…」
突如、マスターは激昂した。
「わかってねェ~なァー酒も飲めねぇーガキンチョはよォ!……俺はなァ、『悪』をとっちめられるなら少なからずの犠牲は仕方ねーと言う主義なんだ…現にお前たちは教皇を殺したッ!それは『悪』だッ!どんな理由かは知らねーが、結果はこう!お前たちは『教会』の、いや『世界』の……『敵』になったんだよォ!」
「理由、か…。思えば、ジェイムズに誘われたものの、僕にはその行為に加担する、明確な理由は無い…孤児への人体実験と言うのも、今まで僕はずっと見て見ぬふりをして来た。ならばこれからもそうすればよかったんだ。だったらこんな事にも巻き込まれずに済んだ…だけど嫌だったんだろうな。見て見ぬふりをしている自分が」
「自分語りは済んだようだな、じゃあそれが遺言だな」マスターがそう言うやいなや、炎はロバートを本体ごと包み、火柱を作り上げた。
「しっかしあっという間だったな…次はそこの三人」その瞬間、車内の炎が全て消えた。
「お前…炎を触れさせたな?この僕の『手に』!」
「まさか、『支配』の能力ってぇ…まー辻褄はあうが…」
「そうだ、『手』に触れたものを意のままに操る、それが僕の悪魔、『ホワイト・ライダー』だ……さて、僕たちに迷惑をかけた詫びだ。しばらく気絶してもらう」
「
掛け声と共に放たれたラッシュは、たちまちにマスターを気絶させた。
「さて……後はこの列車をどうするか、だな」
そう、ジェイムズは呟いた。
―――――――――――――――――――――
教皇の部屋にて。
「イサカに続いてあのマスター、やられたらしいな」
フリークは言う。
「すみません…次こそ優秀な追手を…」
「もういい。こうなっては誰が言っても同じだ。メカニックスであるお前が行くのだ、デイブ」
「その命令、承りました…」
「…せめて1人は殺せ。健闘を祈る」
そうしてデイブは教皇の部屋から去り、やがて自室へ戻り、彼自身の目的地に向かう準備を始めた。ジェイムズたちのいる、モスクワに行くための。
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