第7話 炎上暴走特急①

 ジェイムズ一行はユーロ中央駅から出発する大陸鉄道に乗り込み、モスクワへの旅路を歩んでいた。

「うっひゃあ〜俺の部屋より広い〜!」ロバートが感嘆の声を上げる。そりゃあそうだろパリからモスクワまで行くんだぞ、と言ったのはラーズである。

「しっかしよーお前らが俺の事を見捨ててサクサク駅に言っちまってよー、俺は少しショックだぜージェイムズさんよー」カークがため息混じりに文句を言う。すかさずジェイムズは返した。

「とりあえず、生きてここまで来れて良かった…よし、お前ら今日は1杯やるぞぉ!俺の奢りだ、じゃんじゃん飲めぇぇぇ!!!」

「「「ウオオオオオ!!!!!」」」

 熱気が起きる中ロバートが呟く。

「そういえば僕未成年なんですけど…」

 カークはジンジャーエールでも飲んでおけ、と返した。


 国際鉄道は一口に鉄道と言えども、それはやはり国を跨ぐ長距離の運行なので、中はさながら寝台列車のようになっており、当然バーやレストランの類もあった。なので一行はバーにいた。

 バーは客車の内の1つがそのまま使用されており、中は間接照明により、ほのかに明るく居心地の良さそうな空間を演出していた。

 バーのマスターは、ややパーマかかった黒い癖毛を七三に分け、髪は口髭と顎髭と、それぞれ繋がっていた。しかしその髭は整えられていた為に野暮な雰囲気などなく、マスターと言う職業に相応しい清潔感のある髭であった。

「ようこそいらっしゃいました、お客様…あなた方の身分は把握しておりますが、安心してください…ここに来たあなた方はお客様だ、私は自分の店に来てくれた客はもてなすべきだ、と思ってこの仕事をしています。どうぞごゆっくりしてください…」そうマスターは告げた。

 一行はそこで思い思いに飲み、思い思いに語った。そうして時は過ぎ、日付けが変わろうとしていた。

「もうこんな時間か…明日もあるしそろそろ寝るとするか、マスター、勘定で」

「勘定ですね…わかりました、もう寝てもいい頃合ですしね…ロバート君にはサービスでもしようかと思ったのですが、残念です…」

「サービスですか、ではお言葉に甘えて頂くとしましょう」ロバートは満更でも無さそうに言う。

「俺らは先に席に戻って寝てるからな、サービスとやらが終わったらすぐに戻って来いよ、座席間違えないよーにな!」

「わかりました、カークさん…」

 ロバートを残した三人はバーを退出し、各々の座席に戻ろうとした。

 その直後、バーにある酒瓶が全て割れたかと思うと、直後、爆発し、バーは業火に包まれた。

 三人はバーの方を振り向き、ロバートの名前を叫び続ける。しかし帰ってきた声はマスターのものだった。

「一つ言い忘れていました…あなた方は確かに私のお客様だ、それは今も変わらない。しかし私も教会に雇われた身ゆえ、そこはご容赦頂きたい…」

「『ご容赦』!?出来ないね、そんなもの!」

「おっと!ジェイムズ殿、そこを動かない方がいいですよ…私が先程『ここ』で『何』をしたか、『あなた方』に『何』をしたか…じっくりと考えてから行動して頂きたい…」

「『酒』を…『爆発』させた!そして『俺たち』は『酒』を『飲んだ』ッ!つまり俺たちは生きた爆弾!殺そうと思えばいつでも殺せる…だがロバートは未成年だから酒は当然ダメだ、だからこうやって殺すしか方法がない!」

「グレイトォッ!グレイトォ〜〜ッ!私が審査員ならばあなた方にはノーベル賞をあげたい!しかしな、爆発させたのは酒では無い、アルコールだ…それは私の『魔法』のメカニズムゆえ、ご理解頂きたい…」

「ギギッ…もう喋り終わったか?ならば…ギギッ…こっちが喋る番だ…」

 声の主は全身を火傷していながら、冷たい息を吐くように言った。

「ホワイト・ライダー…」

 その瞬間、体は白く、それ以外はジェイムズ達と同じ容姿の悪魔が姿を表した。


 ホワイト・ライダー。それが彼――――――ロバートの悪魔の名前である――――――。

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