第5話 再起動
煤けた家の壁、破壊された内装から除く配管とコード。所々断線していて火花が散っている。
「父さん?! 母さん?!」
俺は急いで家の奥に駆け込む。
いつもと変わらない帰宅のはずだった。強いて言えば、錬はいなかったが麻耶とのいつもの下校の風景。帰宅して、我が家の中だけが激変していた。リラックスできる調度品は荒れ果て、床も一部フローリングが損壊していた。
「……恵助か……そこに……いるのか……」
「父さん?!」
父さんの声を聞きつけ、駆け寄った俺は変わり果てた両親の姿を見た。
「父さん、母さん……まさか父さんと母さんは……」
「ああ」
父さんは皮肉げに頬をゆがめる。
「私たちは……ロボットだ」
「ごめんなさい、恵助。隠していて……」
父さんも母さんも床に転がっていた。肩や膝から四肢が吹き飛んでいる。出血はなく、吹き飛んだ関節部分、剥き出しの断面からは金属部分とコード類が見える。時折ジジ、と断線したコード部分の音が不快に響く。
「すまない、いつかは話さないといけないと思っていたが……」
ううん、いいんだ、という言葉を呑み込む。いや、気付かないわけがないんだ。同居していて。
「大丈夫、そこは重要な問題じゃない……どうやったら父さんと母さんを元に戻せる?」
俺は父さんの横にしゃがみ込み、尋ねる。絶望的な問いだとしても、ロボット工学の第一人者に聞かなければ俺はきっと後悔する。
「……恵助。まずは私と美智代のメモリーチップを引き抜け」
それはできない相談と言ってもよかった。
「でも、そうしたら俺の手で父さんと母さんを……!」
メモリーチップを引き抜くためには機械の電源をオフにしないといけない。父さんと母さんがロボットであるならば、俺自身の手で両親の電源を切って、機能を停止させると言うことに他ならないのだ。
「い、嫌だ……他に方法はないの?!」
父さんは優しく微笑んだ。自分たちの主電源を切れ、と息子に言ったにもかかわらず。
「恵助。私たちの生命はここで終わりではない。お前さえ無事である限り」
「恵助。あなたが私たちの研究を引き継いで。あなたが学習して自律行動する人工知能の設計図と、人間と同じように稼働し行動できるようにするアクテュエータの回路を理解して、もう一度私たちを再起動させて」
それは、気の遠くなるような話だった。俺は一介の高校生に過ぎない。ロボット工学の第一人者の二人とは違う。だけど……。
「……わかった」
それしか方法はなかった。父さんと母さんを、一生失わないために。
「必ず再開させてくれ。遠い未来で再起動したときお前に会えるのを楽しみにしているよ」
父さんの言葉。
「恵助。私たちの大事な息子。愛しているわ。しばらくは会えないけど、ずっと、あなたと私たちはいるわ」
母さんの言葉。
なぜだか、涙は出なかった。だが必ず父さんと母さんを元に戻すと俺は誓った。
「……恵助」
メモリーチップを握りしめる俺の背後から聞き慣れた声がした。瓦礫を踏みしめ近寄ってくる足音。
「すまない、恵助……」
錬だった。
「どういうことだ、錬!」
この事態は錬が招いたというのか。それはすなわち、錬のせいで父さんと母さんが……!
「錬……!」
「すまない、恵助……」
錬は力なくそう繰り返す。俺が錬の制服の襟首を掴んだところで、
「それは私から説明しよう」
ぬらり、と陰から一人の男が歩み出てきた。家の中にずっといたのか、俺は気付かなかった。年配の男だった。父さんより頭ひとつくらい背が高いだろう。口髭を生やしていて丸眼鏡をかけている。年は父さんと同じくらいだろうか。柔和な雰囲気の父さんと違い、肩幅はやや広くて背丈も相まって威圧感がある
「誰だ?!」
「私は黒沼洋平。君のご両親からも聞いているだろう」
俺は目を見開いた。件の錬の父親、制作者。その本人がここにいると言うことは……。
「私は錬のデータ収集の傍ら、錬の視覚センサーから送られてくる映像で君たちの様子をずっと見ていた」
黒沼博士の言葉に俺は錬の方を振り返る。
「錬?! まさか、お前黒沼博士のスパイだったのか?!」
錬はうつむいたままだ。しかし、黒沼博士は静かに笑った。
「だが……自らデータ送信を拒否するとは……。それもロボット工学三原則に従わず、自律行動するロボット故か。錬よ」
黒沼博士の言葉に、錬は黙っている。
「どういうことだ……? 錬はあんたのスパイじゃなかったのか」
俺が黒沼博士に問うと、彼はにんまりと笑いながら自身の髭をさすった。
「そのつもりだったんだがな。逆スパイとも言うべきか。おかげで私がしびれを切らしてこうしてここに来る羽目になった」
俺が意味が分からず、眉をひそめると黒沼博士は解説し始めた。
「錬は自分の意思で私への通信回路を途絶したのだ。お前たちとの会話、日常。それらが私へと筒抜けにならないよう」
つまり、錬は俺たちの元にスパイとして送り込まれた。しかし、錬は自身の意思でスパイであることをやめた。その結果、黒沼博士自身がここにやってきた。ということは、父さんと母さんは……。
「お前が! 父さんと母さんを……!」
「すまない、恵助。逆効果になってしまった……私のせいだ」
錬は強く唇を噛みしめ、拳を握る。きっと、彼女は感じているのだ。怒り、後悔、悲しみといった負の感情を。
「結構結構。岩清水恵助。君たちのおかげで錬のデータ収集ははかどった。あとは君さえ手に入れば私は言うことなしだ」
黒沼博士の身勝手な言動に俺は怒りが頂点に達していた。
「父さんと母さんたちを殺してまで俺をどうしようと言うんだ!」
俺は激昂して叫ぶ。だが相変わらず黒沼博士は笑っている。
「殺した、とは人聞きが悪い。ロボットを二体半壊させただけだろう。それにメインコンピュータのシャットダウンは岩清水恵助、君自身が行っている」
「お前がそうさせたんだろう!」
いけしゃあしゃあと言ってのける黒沼博士に俺は怒りを抑えられなかった。だが俺の叫びもさして彼は気にしていないようだった。
「そして何より、岩清水恵助」
黒沼博士の次の言葉に俺は耳を疑った。
「お前は岩清水夫妻の、」
「ケースケ、聞いちゃ駄目!」
後ろから、聞き慣れた声がした。隣の家からだろう、駆けつけた麻耶が駆け寄ってくる。錬も麻耶の方を振り向く。自分は麻耶の行く手を遮るように右手を広げる。今、あの黒沼博士という人が何をするか分からない。彼に麻耶には手出しをさせたくない。
黒沼博士は続けた。
「お前は岩清水夫妻の最高傑作のロボットだ」
「違う、違う……! ケースケは……人間……だもん……」
そう麻耶は吐き出す。絞り出すように。先ほどより弱々しく。そしてその語勢が事実がどちらなのかを示していた。
「岩清水夫妻のロボット、岩清水恵助。そして私の最高傑作、御堂錬。ロボットの世界におけるアダムとイブになるべき二体だ。恵助、お前はロボットの王になるにふさわしい。何せ、ロボットの父親とロボットの母親とお前。ロボット三体でずっと暮らしていたのだからな。そうだろう、四葉麻耶」
「……」
「麻耶……? おい、なんで黙ってる?」
うつむいた麻耶に俺は尋ねる。
「知ってて当然だろう。そちらの四葉家はずっと岩清水家の隣に住んでいるのだからな。むしろ、町の他の人間が知らないのが不思議なくらいだ。きっと岩清水夫妻が四葉家に金でも握らせて……」
「おじさんもおばさんもそんなことしてない!」
麻耶が顔を上げて叫んだ。こんなに激情した彼女の姿を俺は知らない。
「ケースケは人間だもん! おじさん、おばさんも! ずっと、ケースケは私と一緒に……」
そこまで言って、麻耶は小さく首を振る。栗色のポニーテールが揺れる。彼女の頬を涙が伝って光る筋がゆっくりと流れる。
「でも、分かってた……ケースケもおじさんもおばさんも、私が遊びに行ってもお茶を飲むのもお菓子を食べるのは私だけで……。食べ物も飲み物も口をつけるところを一回も見たことなかった。トイレに席を立つことも。ケースケは学校でも食べ物も飲み物も口にしてない。一緒に、出かけたときも……」
「……」
父さんと母さんと、麻耶や学校の友人との違いには薄々気付いていた。二人とも一日一食で外食で済ませている、なんて言っていたけれど。
「結構、結構」
麻耶の言葉に満足そうに黒沼博士は笑う。
「ロボットは人間という非合理的で非効率的なものと違い、完璧な存在だ。人間に代わって地球の覇者になるのが相応しい」
黒沼博士は自説を述べる。
「生命。やたらとその素晴らしさを述べるものがいるがその高度な精神性だけ機械に学習させれば人間は用済みだ。あとは機械による社会の実現。学習し、自律行動できる機械による社会と国家を作ることができる。そう、岩清水恵助。お前と錬がいれば」
黒沼博士は相変わらず悦に入っている。ちら、と視線を錬にやると彼女は悲痛な面持ちを浮かべていた。ずっと彼女は俺たちと過ごしながら笑っていたはずだ。人間は非合理的で非効率と博士は言った。だが、錬自身を曇らせたのは間違いなく博士だ。
「そうだ。俺は……ロボットだ」
俺はそう言い放つ。それは今までの自我との決別の独白でもあった。
「ケースケ……っ!」
俺の後ろで麻耶が悲痛な声を上げる。でも、いいんだ。麻耶、今までありがとう。俺に黙っていてくれて。
「俺はロボットだ……だけどみんなと、人間と共に生きる。ロボットと人間が対立するならば、俺は人間を守る」
そう言って俺は一歩前に歩み出る。今まで自分で覆い隠していた記憶がサルベージされる。
初めて起動した日。両親の覗き込む顔。
「おはよう、恵助。私たちの新しい子供」
「大丈夫か? 起き上がれるか? 」
亡くなった岩清水夫妻の第一子長男、岩清水恵太の外見を人工皮膚で再現し、岩清水浩三の人工知能技術、岩清水美智代のアクテュエータの知識を注ぎ込んで制作された自律行動型ロボット。それが俺だった。
最初は亡くなった兄の代わり、純粋に二人の悲しみを埋めるためのロボットとして俺は生み出された。だが。
こうして思い出すまで、自分はテレビでサッカーを見ているのが思い出しうる限りの一番古い記憶だった。といってもプロサッカー選手の試合ではない。少年サッカーに興じる兄の、岩清水恵太の試合だった。地を蹴り、芝を飛ばして駆ける兄の姿。爽やかな五月の風を感じそうな、疾走する兄のドリブル風景。
兄は両親の期待する通りの少年だったそうだ。幼い頃から文武両道で思いやりもあり、自分も起動直後から兄のことを両親に大層聞かされたものだ。ロボット工学の権威である両親にとって、二人の間の子供である兄はまた二人の開発したロボット、俺とは違う愛する存在だった。
当然のように、兄がいなくなって両親は大いに悲しんだそうだ。そのことを聞いて自分も出会ったことのない兄に思いを馳せ、兄のようにならないと、という想いを幼心に無意識に思っていたのだろう。兄の影を追うように自分もサッカーを始めた。
両親もそれに気付いたのだろう。ロボットでありながら、両親の悲しみを埋めようと自らの意思で兄になろうとする自分を両親は優しく諫めてくれた。自分の中に少なからず兄の面影を見ていたであろうに、両親は兄の死を乗り越えて俺を俺と認めてくれた。
そのときから俺は改めて、自分が生まれる前に他界した兄の存在という呪縛にとらわれず岩清水恵助という人間としての自分自身の人生を歩むことができはじめたと思う。
「思い出したさ……」
俺は苦笑する。
「俺は父さんと母さんに制作された。最初は死んだ兄さんの代わりだったのかもしれない。だけど俺に目覚めた自我を感じ取った両親は俺を、俺と認めてくれた……!」
決意を込めて叫ぶ。
「ロボットでもいい、俺は父さんと母さんの息子だ!」
「そうとも。お前は岩清水夫妻が考案した『人間の成長速度』に合わせて外見年齢を経年変化させることのできる、人間社会に極めて溶け込みやすい、人間社会での学習に特化させた特異個体だ」
「ケースケ……」
麻耶が呆然としてつぶやく。だが、安心してほしい、麻耶。絶望することはにもないんだ。
「私もすでにロボットなんだよ」
そういうと黒沼博士はべりっ、と自身の顔面の人工皮膚を半分引き剥がす。ひっ、と小さく悲鳴を上げて麻耶は目をそらす。顔面の眉間と鼻筋を通るラインで剥がれた黒沼博士の人工皮膚。皮膚に覆われていないもう半分は機械化されたボディの頭部が剥き出しになっていた。
博士は笑っている。もうすべてを手に入れたかのような気持ちで。だが、俺は皮肉を込めて言う。
「いや、黒沼博士。あなたは……人間だ」
「……何を言う? これが見えないのかね」
博士は自身の機械の頭部を誇示して見せた。
「黒沼博士……。『御堂』は母さんの旧姓だよね」
俺の言葉に博士は固まった。
「あなたはロボットが人類よりも地球の支配者に相応しいと思っているんじゃない。ただ、許せなかっただけだ。母さんが手に入らなかった世界を」
錬との初対面で、俺は感じ取っていた。昔見た、若いときの母さんの写真と同じ面影を。錬は目を見開いた。
「知ったような口を聞くな! 今更人間なぞに……不完全なものに私は執着はない!」
俺は首を振る。
「あなたも言ったように母さんはロボットだったんじゃないのか。いつからかは分からないけど、あなたは知っていた。それでも、あなたは錬を制作した。御堂錬として。きっと、結婚前の母さんの面影を……」
「黙れ小僧!」
今度は博士が激昂する番だった。明らかに動揺している博士に俺は続けた。
「今あなたは確かに怒っている。そこまで人間的な感情を有しているんだ。そして自分が手に入らなかった幸せを、そんな非合理的なことにこだわるあなたがロボットなんかであるわけがない。ロボットの器の中に極めて人間的な感情を含有しているあなたが」
「くそっ、どこまでも忌々しい……まるで若いときの浩三のようだな……」
黒沼博士は独白を続けた。
「人間とロボットの共存などちゃんちゃらおかしいと私が否定しても浩三は共存の未来を夢見る奴だった……完璧なロボットだけの世界より不完全な人間や生命体を含めた多様性こそが重要、などと言って」
俺は知り得ぬ両親と黒沼博士の確執を想像した。きっとそこで断絶があったのだろう。かつての旧友との、研究仲間との。
「……錬、お前は私と一緒に来い」
黒沼博士は再び人工皮膚を頭部に纏う。もう外見では再び普通の人間と見分けが付かなくなっていた。
「……ごめんなさい、お父さん」
錬は小さく首を振る。黒髪が揺れる。錬の言葉に黒沼博士は驚きに目を見開く。
「錬、何を言っている……?! お前はロボットの女王になるにふさわしい存在なのだぞ?!」
「私は、人間として生きたい。完全でなくてもいい」
錬の言葉にますます博士は激昂する。
「くだらない人間の哲学なんぞに影響されたか?! お前は既に生命という不確かで永遠でないものから解き放たれた完全な個体なのだぞ?!」
「たとえ、永遠でなくたって……」
錬が言う。
「私が世界を知覚している限り、私は存在している。……私は生命でありたい」
それは錬と黒沼博士の決別の瞬間だった。
「……岩清水恵助。ひとまず錬の身はお前に預けておこう」
「待て! 逃げるのか?!」
自分の言葉に黒沼博士は忌々しそうに吐き捨てる。
「お前がいずれ人間に絶望し、ロボットとして生きたくなる日が来る。その日こそ、お前と錬をロボット界のアダムとイブにして人間社会を終わらせる」
「待て!」
家の外には野次馬が集まっていた。火の手は上がっておらず、火災ではないので現時点では緊急車両の類いなどは来ていない。それも時間の問題だろうが。黒沼博士は野次馬の間をかいくぐって逃げていく。その背を追おうとして、自分は隣に立つ錬と、後ろに座り込んでいる麻耶へと視線を向けた。そして、黒沼博士を追うのを断念した。
どれくらい時間が経っただろう。警察が訪れ、事情聴取が行われることになった。自分はともかく、錬は黒沼博士の関係者として重要参考人として一旦保護……あるいは拘留されるらしい。
いずれにせよ、前例のないことだった。ロボット工学三原則にもあるように、法律の上での自律行動するロボットが人間に危害を加えたり、事故を起こしたりすることを想定していなかった。
そしてこれは殺人事件ではなかった。父さんも、母さんも人間だけどロボットだ。破壊行為ではあるが器物破損などで処理されるのだろう。俺は手の中にある父さん、母さんのメモリーチップを握りしめた。
俺はいつの日か、父さんと母さんのボディを修復して二人を蘇らせてみせる。なぜならば、俺は岩清水両博士の叡智の結晶だ。父さん、母さんが俺を産みだしてくれたように、今度は俺が父さんと母さんを修理して、この世に生み出してみせる。いつか、二人が再起動するその日まで、俺は諦めない。
「錬」
俺は複数の警察官に連れられて、去って行こうとしていく錬の背中に声をかける。彼女は振り向く。美しい黒髪が揺れる。
「……もし、民事の上での問題だけなら俺が……いや、俺たちが減刑を嘆願する。錬とお父さんはきっと、これから人間とロボットが手を取り合っていく上できっとなくてはならない存在だから。それに……錬は俺たちの友人だ」
その言葉に錬は微笑んだ。
「こんな私を友人と呼んでくれるのか」
「当たり前だろう。必ず戻って来いよ。今は散らかってるけど……当分はここがお前の帰る家だ」
俺は家屋を指さして笑った。短い間だけど、俺たちと錬が過ごした我が家。
「ありがとう。恩に着る」
錬は軽く目を閉じた。深く、何かに感じ入るように。
「それから……麻耶に伝えてくれ。まだ勝負は負けていないと、な」
俺はよく分からない彼女の言葉に思わず頭上に疑問符を浮かべる。
「何の勝負?」
すると彼女はやれやれ、と言うようにで首を振った。
「理解力はロボットよりも人間寄りと言うことか……ひどいポンコツというべきか、鈍感というべきか」
「……なんかひどくね?」
錬の言葉に少し傷ついた俺に、彼女は小さく微笑んだ。
「いや。何でもないさ。いずれ恵助にも分かる日が来る」
「なんなんだよ、もう」
錬は俺に背を向ける。俺は視界で翻った錬の長い髪に視線を惹かれた。絹のような黒い髪。夕陽に少し光って。
……変わらないでほしいと思っていても、変化は必ず訪れるものだ。麻耶と俺も、いつまで一緒にいられるか分からないし、彼女と俺の関係性もいつかはまた変わっていくのだろう。錬との関係性も、出会った日から変わっていった。彼女自身が、人間を理解し、成長し、変わっていったように。
ロボットであったとしても、俺はこうして生きている。俺が知覚する限り、世界を知覚する俺自体は間違いなく存在している。それがロボットを拒む世界であったとしても、ロボットと人間が争う世界であったとしても、ロボットと人間が手を取り合って一緒に暮らせる世界であったとしても。
世界を感じ取る自分自身。自我が芽生えた俺たちは、きっと一個の生命なのだろう。
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