8 『天の遺産』を持つ者たち2
「あいかわらず仲が悪いな」
黒い衣装の美女――『破壊』の力を持つディータが小さなため息をついた。
「牽制してるだけでしょ~」
白いドレス姿の美少女――『移動』の力を持つシリルが朗らかに笑う。
彼女たちは、先の戦いで光竜王のバックアップをしたものの、最終的にはレインやヴィクターに敗れている。
とはいえ、その戦いは二人からすれば小手調べのようなもの。
本番はこれからということなのだろう。
「最初に『星の心臓』へとたどり着く者――自分がそれになろうとして、か」
「誰だって一番乗りしたいじゃないですか~」
「最初にたどり着いた者には、あらゆる願いと万能の力が宿ると言うが――」
「ま、あたしたちだってライバルですからね」
「私は別に興味はないんだ」
「そう言いながら、ひそかに狙ってるでしょう、ディータ」
「――コメントは差し控える」
などと話している二人に対し、
「ライバルかもしれないが、今はまだ仲間だ。俺たち全員が、な」
ゴルドレッドが彼女たちを、そして全員を見回した。
「それぞれの思惑はあるだろうが、まずは意思統一をして事に当たってもらいたい」
ただ、このバラバラの集団をまとめ、同じ方向に向かわせるのは中々に骨である。
リーダーとは損な役回りだ。
ゴルドレッドは内心でため息をついた。
※
俺はバーナードさん、ラス、そして女冒険者のローザの三人とともにヴィクターさん探索に旅立つことになった。
これはギルドから斡旋されたクエストじゃない。
三人が純粋な厚意で俺を手伝ってくれるのだ。
ありがたい、という言葉しかなかった。
いくら俺にチート級の付与魔術があるとはいえ、人探しでどこまでその力を発揮できるか……という問題がある。
特定の人物を探し当てる魔道具、みたいなものがあれば、その性能を『強化』してヴィクターさんを探してもいいんだけど、あいにくそういった道具の心当たりはなかった。
となれば――地道に探すという方法一択である。
一人よりも四人の方がずっと心強い。
で、俺たちはどうやってヴィクターさんを探すかについて相談していた。
「探索魔法?」
「そ。私の得意技よ~」
と、ローザ。
「そのヴィクターって人を探してみるね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます