7 再会

「なんだ、これは……?」


 一人の中年剣士がやって来る。

 精悍な顔立ちとざんばらの黒髪。


 ん、あれは――。


「ヴィクターさん!」


 俺は彼に手を振った。


 どうしてここに――?

 疑問はあるものの、伝説級の剣を持つ剣士の加勢はありがたい。


 ……と思ったところで、もう一つ疑問が出てきた。


 ヴィクターさんって、どれくらい強いんだろう?

 戦っているところを見たわけじゃないし、本人はC級冒険者だって名乗ってたからな。


 いくら伝説級の剣――『翠風の爪ローゼリア』を持っているとはいえ、その実力は未知数だった。


「私も加勢したほうがよさそうだな」


 ヴィクターさんが剣を抜く。


 そして、真横に振るった。


 ごうっ!


 三日月型をした緑色の光波が放たれる。

 あれが『翠風の爪ローゼリア』の力か……!?


 光波がゴーゼスの分身体を次々に切り裂き、消し飛ばしていった。


「ちいっ」


 後退するゴーゼスに、


「戦闘は私の専門分野ではないが――町を襲う君らを見過ごすことはできない」


 ヴィクターさんが超スピードで間合いを詰めた。


 なんだ、あの身体能力は――?

 異常なスピードで、俺にはほとんど動きが見えなかった。


 気が付けば、ヴィクターさんはゴーゼスのすぐ眼前へと迫っている。


「な、なんだと!? この俺の反応が追い付かない――」

御免ごめん!」


 ヴィクターさんは剣を一閃した。

 見事、ゴーゼスの首を綺麗に落とす。


「す、すげぇ……!」


 ラスが感嘆の声をもらした。


 俺も驚いている。

 ヴィクターさんはC級冒険者って聞いていたけど、今の身のこなしは明らかにS級か、それ以上だった。


 こんなに強かったんだ、ヴィクターさんって。




 戦いを終え、俺たちは人心地ついていた。


「いいタイミングで加勢できたかな?」

「はい、助かりました」

「ところで、ここがどこなのかを教えてもらえると助かる」


 きょろきょろと周囲を見回しているヴィクターさん。


「また迷ってたんですか……」


 俺たちを助けに来てくれたんじゃなくて、単に道に迷って偶然この場に出くわしただけらしい。


「いや、宿泊先の宿屋に向かってたはずなんだが……」

「宿屋は反対方向だと思いますよ……」


 俺は苦笑した。


「でも、ちょうどいいタイミングでした。おかげで七竜騎を手早く倒せましたよ」

「七竜騎……?」

「実は――」


 俺はヴィクターさんに手短に事情を話した。


「なるほど、そんなことに……レイン、あなたは私を訪ねてくれていたんだな。すまない、留守にしていて」

「いえ、こうして会えたし、よかったです」


 ヴィクターさんがこの辺に迷いこんでくれなかったら、会うのにもっと苦労していただろう。

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