6 総力戦


「あたしもいるからね、レイン」

「俺もです!」


 颯爽とした雰囲気の金髪女剣士と、勝ち気そうな黒髪の少年剣士だ。


「ブリジット、ラス……」


 さらに、


「ん。私も」


 青い髪をショートヘアにした小柄な美少女が、足音もなく現れる。


「ミラベル――」


 ギルドの上位メンバー総登場って感じだった。


「二人ともバーナードさんを手伝ってくれ。俺は本体を叩く!」

「本体を叩くだと? お前の剣の威力は報告を受けているが、俺の防御の前では無力だ」


 竜が笑う。


「どうかな?」


 俺は無造作に剣を振り上げる。


「試してみるか? お前の盾で防げるかどうか――」

「ぐっ……」


 ボルンの顔から笑みが消え、代わりにひきつったような表情になった。


 恐怖の、表情だ。


「レイン、雑魚は任せろ!」


 バーナードさんが杖を振るった。


「【ウィンドボム】!」


 風の爆弾が分身体を一体倒す。

 以前に俺が杖を強化したことがあったけど、それ抜きでもバーナードさんの魔法は強力だ。


 別の場所ではブリジットやラスがそれぞれ分身体を倒していた。

 そして、ミラベルは、


「えいっ」


 こういう乱戦でも意外と強いぞ。

 二本のナイフを振り回し、五体ほどの分身体をあっという間に斬り伏せる。


「分身は任せて」


 ミラベルが静かに告げた。


 おお、頼もしい。


「じゃあ俺は自分の仕事を果たすとするか」


 俺は剣を手にゴーゼス、ボルンとの間合いを詰める。


「くっ……!」


 完全におびえている二体の竜種。


 ゴーゼスが分身を放って行く手を阻もうとするが、バーナードさんたちがこれを引きつけ、各個撃破していく。


「お、おのれ……!」


 分身を生み出すペースより、バーナードさんたちが分身を倒す速度の方がわずかに上回っていた。

 俺は少しずつ距離を詰める。


 やがて、剣の攻撃範囲にまで近づけた。


「もうお前を守ってくれる分身はいない――」


『燐光竜帝剣』を振りかぶる。


「終わりだ」

「【竜鱗壁スケイルシールド】!」


 ボルンがふたたび防御術を発動する。


 そう来ると思っていた!

 俺は構わず剣を叩きつけ、シールドを破壊する。


 が、盾の丸みに弾かれ、剣が滑る。

 俺の体勢が崩れる。


 その間にボルンとゴーゼスが距離を取った。


 ここまではさっきの攻防とほぼ同じ――。


「だけど!」


 俺は崩れた態勢のまま、懐から取り出したナイフを投げつけた。

 強化ポイントを『10000』ほど付与しつつ。


「がっ、ああああっ……!」


 直撃を食らったボルンは胸を貫かれ、倒れた。

 胸に大穴が空いている。


「やっぱり、連続してその術は使えないみたいだな」


 ばきん、と音がして、ナイフが砕け散った。


 +10000の付与では一撃しか刀身が耐えられなかったんだろう。


 おかげで――一体倒せた。

 ありがとう投げナイフ、お前の尊い犠牲のおかげだ。


「残るは、お前だ」


 俺はゴーゼスを見据える。


 と、そのときだった。


「なんだ、これは……!?」


 突然、背後から声が聞こえた。

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