12 星の心臓


 俺は紋章の中に浮かんだものに目を凝らした。


 何かの映像のようだ。


 漆黒の夜空と満天の星。

 石でできた塔がいくつも建ち並ぶ荒野。

 そして白く輝く人影――。


『ここは「星の心臓」と呼ばれる場所。この世界の中心点。そして「天の遺産」が生まれ、人に継承されていくための発信点――』


 声が告げる。


『かつて、あなたと同じ力を持っていたものが、このナイフに刻んだのです……メッセージを』

「メッセージ?」


 つぶやきながら、心臓の鼓動が高鳴るのを感じた。


 俺と同じ力――。

 チートといっていい、この付与魔術のことか?


 あるいはもっと別種の能力だろうか。


 どちらにせよ、それは規格外レベルの力だったに違いない。


 俺以外にもそんな人間がいたのか……?


 もう一度、映像に目を凝らす。


 白い人影はいくつもあった。


 彼らには、それぞれの『力』があるらしい。

 ある者は空に炎を放ち、空一面を赤く染めるほどの爆光を放っていた。

 ある者は一瞬にして巨大な城を建設する。

 ある者は惑星ほどのサイズの竜を召喚する。

 またある者は――。


 いずれも、規格外の能力者だった。


『「星の心臓」を訪れてほしい。自分には叶わなかったが、誰かが意思を継がなければならない。誰かがそこにたどり着かなくてはならない』


 声が告げる。

 俺と同じ力を持っていたという、その人の言葉を。


『いつか――あなたがそこを訪れることがあれば……ふたたびお会いしましょう……』


 その言葉を最後に、輝きは消えた。

 ナイフからは、すでに光の紋章はなくなっている。


「『星の心臓』……」


 声が言っている内容はよく分からない。


 だけど、壮大な雰囲気は感じた。

 ふらっと立ち寄った武器店で、まさかそんな大層なメッセージを見ることになるとは。


「? どうしたんです、レインさん?」


 ラスが不思議そうに俺を見ていた。


「あれ? もしかして、今の声って聞こえなかったのか?」

「声?」


 ラスはますます不思議そうな顔をする。


 ……どうやら、今の声を聞くことができたのは俺だけらしい。


 あるいはその『天の遺産』とやらを持つ者にしか聞くことができないのかもしれないな。

 いや、さっきの話だと俺は『天の遺産』っていうのを持っているみたいだけど、心当たりはまったくない。


「いつか、そこを訪れてほしい――か」

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