10 未来ある若者
「ん、ちょっと待て。剣を見せてくれないか、ラス」
俺はあることに気づいて、ラスに言った。
「どうぞ」
鞘に入った剣を差し出すラス。
抜いてみる。
白銀の刀身があらわになった。
――だけど。
「これ、折れる寸前だぞ」
なんとなく、そんな予感がしたんだ。
ラスって自分の武器に全然気を使わないタイプらしい、って前に聞いたことがあったからな。
「えっ」
驚くラス。
「ほら、ここ」
俺は刀身を指さした。
そこに細かい亀裂がいっぱい入ってる。
それに歪みも大きいし、もう寿命だ。
「あー……あんまり気にしないで使ってました」
にへら、と笑うラス。
ユルイ奴なんだよな……。
「俺、割と適当で……あはは」
「まったく……こいつはセンスだけで戦ってるからな」
バーナードさんが苦笑した。
「もう少し装備に気を遣うなり、戦術を学ぶなりした方がいいぞ」
「そういうの苦手で……でも、がんばります」
「ああ。センスだけで適当に戦ってもB級目前まで来てるんだ。きっちり学びながら戦えば、お前なんてすぐにA級だろう。S級だって遠くないはずだ」
バーナードさんが言った。
「未来ある若者には羽ばたいてほしいからな、がはは。老婆心で忠告してしまった。許せ」
「いえ、ありがたいです!」
ラスが言った。
素直な性格だ。
「確かに、ラスには羽ばたいてほしいよ。みんな、14歳でそれだけの実力はやっぱりすごいからな。次のエースはお前だよ」
俺はにっこり笑った。
「あ、いや、こんなこと言ったら、逆にプレッシャーか。ごめん」
「い、いえ、嬉しいです! 俺……感激してます! レインさんにそう言ってもらえて!」
ラスの口調は、熱い。
「がんばります!」
本当、素直で好感が持てる。
「じゃあ、新しい剣を買いに行くか。付き合うぞ」
「えっ、本当ですか!」
ラスが表情を輝かせた。
「今日は強化ポイントがけっこう手に入ったから、ついでに新しい剣に強化ポイントを付与するよ。そっちの古い剣に込めてある分は回収させてくれ」
「了解です!」
――というわけで、ラスと武器店に行くことにした。
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