9 ラス
「最近のレインさん、今まで以上に絶好調ですね!」
嬉しそうに駆け寄ってきたのは、十四歳の少年剣士ラスだった。
俺がこのギルドに入って以来、何かと「レインさんレインさん」と話しかけてくる。
慕われている感じだった。
「ああ、モンスターの探知機を使ってるんだ。他の冒険者にも貸したりしてるけど、まだ数がそろわなくてさ」
そう、あれから俺は探知機を買い足し、ギルドの所属冒険者に使ってもらっていた。
おかげで、みんな討伐効率がかなり上がっている。
この分だと、ギルド自体のランクも次のランキング更新で上がりそうだということだった。
所属冒険者全体の底上げができている、というのは喜ばしいことだ。
ただ、探知器自体が道具屋にあまり売っておらず、数を確保できていない。
いちおう近隣や王都から取り寄せを頼んでいるけど、まだ時間がかかりそうだ。
あと、根本的な問題として俺の強化ポイントが足りていない。
まあ、こっちは毎日かなり討伐しているから、少しずつポイントの余裕は出てくるはずだ。
「へえ、俺も使ってみたいです。っていうか、レインさん、探知機を独り占めしなかったんですね。さすがです」
「独り占め?」
「そういう便利アイテムを他の人にも使わせてくれるなんて、偉いなぁって」
ラスは何かにつけて、俺を褒めてくれるなぁ……。
「ギルドには世話になってるし、みんなが効率よくクエストをこなせるようになれば、それが一番いいよ」
「ちゃんと、他人のことを考えられるのが偉い、ってことですよ。やっぱりレインさんはすごいなぁ。俺の憧れだ」
「探知機を貸し出しただけだよ。褒めすぎだ」
「そんなことないです!」
力説するラス。
なんだかくすぐったい気持ちになってきた。
「なんだ、今日は男にモテてるのか、レイン。がはは」
豪快な笑い声とともにバーナードさんがやって来た。
「あ、お前に借りた探知機のおかげでクエストがすぐに終わったぞ。これは返せばいいのか?」
「あ、午後から別のパーティが使うみたいなので、いったん窓口に渡していただけますか」
「おう。こいつのおかげで助かってる。ありがとうな、レイン」
「お役に立てたなら何よりです」
礼を言うバーナードさんに、にっこりうなずく俺。
「元エースのバーナードさんからも、これだけ一目置かれてる……やっぱり、さすがです!」
「だから、褒めすぎだよ。ありがたいけど」
俺は苦笑した。
「はは、それだけお前に憧れてるんだろう。いいことじゃないか。目標となる人間が身近にいるっていうのは。がはは」
バーナードさんが笑う。
「実際、ラスの成績もレインがギルドに来てから、かなり上がってるからな。早くお前の成績に追いつきたいんだろう」
「へえ、そうなのか」
「はい! まずはB級に上がりたいです! そしていずれはレインさんとパーティを組めるような剣士になりたい――いえ、なります!」
目をキラキラさせて語るラス。
若者らしい希望に満ちた目だ。
俺も、嬉しくなってきた。
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