6 探知機1


「えっ、第四の伝説の剣……?」


 俺は魔導通信でマルチナと話していた。


 ちなみに、この通信はかなり高価で、一般家庭などにはない。

 この町では『青の水晶』に一つ置いてあるくらいだ。


『青の水晶』ってそんなに金持ちギルドじゃないのに、よく魔導通信装置なんて置いてるな……と思ったら、ギルドマスターのエルシーさんが「あたしの趣味だから!」って言ってたな。


 と、それはさておき、通信装置には小さな鏡台みたいな部分に相手の姿が映る。

 マルチナは怪訝そうな顔をしていた。


「光竜王を封じた剣は三本だけ。伝承にはっきりと書いてあるの。だから、そのヴィクターさんの剣はやっぱり別に由来があるんじゃないかな?」

「俺の剣と共鳴した理由は分かるか?」

「うーん……少なくともあたしの剣には反応はなかった。たぶんリリィちゃんの剣にも。ある程度の距離が近くないと共鳴しないのかもしれないね」

「ヴィクターさんはもともと剣に導かれて、この町に来たって言ってたんだよな」

「向こうの剣だけは、もっと遠い位置からでも共鳴を感じ取れるとか? あるいはレインくんの剣だけが特別なのか……今のところ、情報が少なくて判断できないね」


 と、マルチナ。


「あたしは、ちょっとこっちで事件に巻きこまれてて……動けないのよ。それが片付いたら、一度レインくんのところに行こうかな。そのヴィクターさんの剣も見てみたいし」

「分かった。じゃあ、ヴィクターさんにも伝えておくよ。まだ町に滞在するみたいだからな」


 俺はマルチナとの通信を終えた。




 日中はクエストをいくつか片付け、夕方にでもヴィクターさんを訪ねることにした。


 ……というわけで、窓口にやって来る。

 あいにくニーナは他の冒険者とやり取りをしていた。


 隣のブースに行く。

 窓口嬢はメアリという名前だ。


 以前にも少し話したことがある。

 赤いショートヘアにそばかすの浮いた愛嬌のある娘だった。


「あ、こんにちは。レインさん。今日はあたしのところに来てくれたんだ」

「ああ、よろしく頼む」

「そっか、ニーナの窓口が空いてないもんね」


 ふふっ、と笑うメアリ。


「前からレインさんの受付をやってみたかったんですよね」

「そうなのか?」

「ニーナが羨ましかったんですよ。ほとんどレインさんの担当状態じゃないですか」

「まあ……ここに来て、最初に受付をしてもらったのがニーナだったからな。話しやすくて、つい毎回彼女のところに行ってしまうんだ」

「ふふ、優しくていい子ですからねー、ニーナって」


 メアリがにっこりとして言った。

 と、


「この探知機のおかげよ。モンスターを発見してくれたわ」

「へえ、初めて見ました……」

「最近、王都で開発されたばかりの魔導装置なの。あたしはこの前、王都に用事があったから買ってきちゃった」


 そんな声が隣から聞こえてきた。


 ニーナのブースである。

 ん、モンスター探知機……?


 俺は興味を引かれた。

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