5 第四の剣士2


「光竜王の封印、か」

「はい。俺が持つ剣と、他に二本の剣――合計三本で光竜王を封じていたようなんです」


 俺はヴィクターさんと話していた。


 場所はギルド一階にある喫茶店だ。

『青の水晶』はギルドの規模自体は小さいんだけど、建物内に食堂や喫茶店、酒場まであって、けっこう飲食関係が充実しているんだよな。


 周辺施設だけじゃなく、冒険者が加入できる各種保険や補償金なんかも手厚い方だと思うし、良心的なギルドだと思う。


「ただ四本目の剣がある、とは聞いてないので、ヴィクターさんの剣はまた由来が違うものかもしれませんね」

「うむ。私も遺跡で手に入れただけで、この剣にまつわることはほとんど知らない」


 と、ヴィクターさん。


「ただ、遺跡がある地元の人間は竜に関係するものだと言っていたが……」

「竜?」


 じゃあ、やっぱり光竜王にかかわりがある剣なんだろうか。

 それとも別の竜――?


「私はもともと遺跡探索メインで冒険者をやっていてな。珍しい遺物を見つけたときは、ある男に鑑定してもらっていた」


 ヴィクターさんが言った。

 ちょっと癖があるけど、物腰や柔らかいし、基本的に紳士的な人みたいだった。


「この町に来たのも、剣の共鳴に導かれたのが一つと、もう一つの理由は彼に会うためだ」

「鑑定魔術の使い手ですか?」

「ああ。以前にも私が遺跡で発見した珍しいアイテムをよく見てもらっていた。彼がこっちに居を移してからは疎遠になっていたが……いい機会だから、剣のことも見てもらうつもりだ」


 と、ヴィクターさん。


「何か分かったら、あなたにも知らせるよ」

「ありがとうございます。俺も心当たりのある人間に聞いてみます」


 まずはウラリス王国にいるマルチナに聞いてみようかな。




 ギルドの出口で、俺はヴィクターさんを見送るところだった。


「私はしばらくこの町に滞在する。用があったら、訪ねてくれ」


 告げられた宿の名前は、ギルドからごく近い場所にあるものだった。


「では、また」


 去っていくヴィクターさん。

 ――って!


「ちょっと、ヴィクターさん、反対方向ですよ!」

「ん? ああ、また迷うところだった」


 ヴィクターさんが方向転換する。


「いや、一周回ったら結局逆方向に行くことになるじゃないですか」

「そ、そうか?」

「二周回っても一緒ですよ!」


 なんで百八十度方向を変える、ってことができないんだろう?


 この人、本物の方向音痴だ……。

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