追放されたチート付与魔術師は気ままなセカンドライフを謳歌する。俺は武器だけじゃなく、あらゆるものに『強化ポイント』を付与できるし、俺の意思でいつでも効果を解除できるけど、残った人たち大丈夫?
1 バリオス、ギルドを再建しようとして泥沼にはまる《追放者SIDE》
第9章 青の水晶
1 バリオス、ギルドを再建しようとして泥沼にはまる《追放者SIDE》
「追加資金?」
「はい。ここでお金を注ぎこまなくては。今が勝負時ですよ」
イルジナがまっすぐバリオスを見つめた。
この位置からだと彼女の深い胸の谷間がよく見える。
眼福だった。
思わず鼻の下を伸ばすバリオスに、イルジナはキスせんばかりに顔を近づけ、
「さ、ご決断くださいませ。バリオス様なら大胆かつ的確な判断ができるでしょう? 大陸最強ギルドのマスターを務める優秀なお方なのですから」
「そ、そうだ……俺は大陸最強ギルドを束ねる男! これくらいの判断、できて当然だな」
「素敵ですわ、バリオス様」
うっとりとこちらを見つつ、イルジナはバリオスの手元の金をすべて奪って言った。
「では、確かに。私がこの資金の使い道を熟考しますので」
「ああ、任せた」
イルジナがその資金を具体的に何に使うのか。
そもそも再建とはいったい何をしているのか。
バリオスは詳しいことを知らずにいた。
イルジナに確認はするのだが、いつも上手い具合にはぐらかされる。
色気たっぷりの体ですり寄られたり、いつでも愛人になりますよ、とほのめかされたり――彼女の誘惑交じりの説明に、つい理性的な判断が緩んでしまう。
(まあ、いくつものギルドを建て直してきたやり手だ。ここはプロを信じよう)
その後、バリオスは三人の副ギルドマスターを呼び戻した。
「再建人?」
「ああ、お前たちも戻ってくるか?」
バリオスが言った。
「お前たちとはずっと一緒にやって来た。このまま別れるのも寂しい話だ」
「けど……『王獣の牙』はもう……」
「あんたには悪いが、ギルドの先が見えねぇ」
「ふむ。儂らにも日々の生活があるからの」
「それなら問題ない。イルジナがいくつかのギルドと交渉して、こっちと吸収合併させるらしい」
「吸収……合併?」
「といっても、メインはあくまでのこっちだ。つまり他のギルドの人員を吸収して、減ってしまった冒険者を補充しようってことだ」
バリオスが語る。
「冒険者ギルドの力ってのは、端的に言えば所属冒険者の数だ。そいつを一気に増やせば、またのし上がることだって不可能じゃない」
バリオスは燃えていた。
まさか、イルジナにだまされ、今後も資金をどんどんと吸い上げられていくとは想像もしていない――。
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