13 最深部到着


「なんて、圧倒的な――」


 リリィが呆然とした顔で俺を見ていた。

 マルチナやマーガレット、ミラベルも同じだ。


 ……まあ、俺も驚いたけど。


「光竜王が相手でも通用しそうね……」


 と、マルチナ。


「まあ、未知数だし、まずは封印という方針でいきましょう」

「そうだな」


 ともあれ、これで難敵レドグフは撃破できた。


「後は、遺跡を進むだけだな」




 ――その後は、特筆するようなことは何もなかった。

 道中、罠やモンスターは何度か出たが、俺たちの敵じゃない。


 俺は率先してモンスターを倒し、消費した強化ポイントを少しでも補充するように心がけた。


 といっても、やっと2000ほど。

 失った33万超には遠い。


「あの技は本当の強敵相手にだけ使うことにしよう……」


 苦笑しつつ進む。


 ほどなくして、遺跡の最深部にたどり着いた。


 巨大なホールのような場所。

 壁一面に魔導装置がずらりと並んでいる。

 計器類はあちこちが点滅したり、時折なんらかの数字や文字が表示されたり……忙しく稼働しているようだ。


「道中の罠やモンスターは除去したし、とりあえず安全ルートは確保できたね。帰り際に同じ道を逆にたどって、もう一度確認しましょう」


 マルチナが満足げに言った。


「みんな、おつかれさま。特にレインくん……すごかったよ」


 ぱちり、とウインクされた。


「ええ、本当に……!」


 リリィが例によってキラキラとした目で俺を見つめる。


「あたし、感動しました」

「いや、俺は……武器の性能を強化してるだけで、リリィたちみたいに素で強いわけじゃないからな」


 と、俺。


「確かにレイン様の圧倒的な攻撃能力は付与魔術によるもので、あなた自身の剣術や武術ではありません。ですが……その根幹となる付与魔術はレイン様の力でしょう。あなたが鍛錬で得た力――それは賞賛されるべき強さだと思います」

「……そうか。ありがとう」

「強さ以外にもいろいろと便利に使える。レインは偉い」


 ミラベルが言った。


「だから、私に便利グッズがほしい」

「お前、おねだりしたいだけだろ……」

「道中の罠解除は、私も活躍した」

「それは……まあ、そうだな」


 モンスター退治は主に俺やマルチナ、リリィがやり、マーガレットがその補佐。

 そして罠解除はミラベルがけっこう頑張っていた。


「……悪用しないなら、何か考えておくよ」

「やった」


 ミラベルが小さくガッツポーズ。


「けど、今回の戦いで強化ポイントをかなり消費したんだ。また溜めなきゃならない」

「待ってる」

「ちっ、ますますとんでもない攻撃力になってやがるな。追いつくのが一苦労だぜ」


 肩をすくめたのはマーガレットだ。


「けど、俺だってもっと強くなってやるからな。見てろよ!」


 と、闘志を燃やしている。


 とりあえず、全員無事にここまで来られたことが嬉しい。

 新しい術式も会得したしな。


 こいつは今後の戦いで切り札として活用できそうだ――。

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