12 付与魔術、第三の術式


 付与魔術、第三の術式――。


 土壇場で新たな領域にたどり着けるとは。

 今まで七年間、こんなふうに術式が増えることはなかった。


 それがここ最近で増え始めたのは、やはり今までとは比べ物にならない強敵と何度も戦ったからだろう。

 ともあれ、


「第三術式の詳細を教えてくれ」


 俺は空中に向かって呼びかけた。


 その間にも、竜牙兵はどんどん増えていく。

 すでに三十体を超えていた。


 これでは簡単にはレドグフまでたどり着けないだろう。


 そのとき、空中に第三術式の内容が表示された。


「強化ポイント333333を消費し、全兵装一斉射撃型攻撃を行う――」


 さらに詳細を見る。


「なるほど、これなら――」


 威力は絶大だ。

 ただし、強化ポイント333333というのは手持ちのポイントのほとんど全部だ。

 これを使えば、メイン武装以外のポイントは使い切ってしまう。


「そっちはまた集めるしかないか……」


 俺は小さくため息をついた。


「どうした? 俺を倒すのは諦めたか?」


 勝ち誇る巨竜。


「――いや、たった今、準備を終えたところだ」


 俺はレドグフを見据えた。


 意識を集中する。

 思考を加速させる。


「付与魔術、第三術式起動──」


 呪言を唱えた。


「今までの戦いで目にしたすべての武器の記憶を具現化――」


 俺の背後に浮かび上がる無数の剣、槍、斧、弓矢……おびただしい数の、おびただしい種類の武具。


「そのすべてを再現し、強化し、解き放つ――!」


 轟っ……!


 数千数万の武具がいっせいに射出された。

 全方位から、雨あられと。


 眼前の竜牙兵たちは、武器の暴力とも呼べる攻撃で、一瞬にして掃討された。

 さらにその後方に位置するレドグフに、残る武器群が殺到する。


「ぐっ、おおおおおおおおおおおおおおおおおおっ……!?」


 集中砲火を受けた巨竜はひとたまりもない。

 全身を貫かれ、さらにその威力に細胞一つ残さず焼き尽くされて消滅する。


「ち、ちょっと威力が過剰すぎないか……?」


 さすがに唖然としてしまった。


 33万超もの強化ポイントを消費するだけあって、とんでもないオーバーキルだ。


「これ、光竜王が相手でも余裕で倒せるんじゃ……?」

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