9 強化して超戦士に


 俺はパワーやスピードを10倍に強化した状態でライエルと対峙した。


「このっ……!」


 ライエルが焦ったように後ずさる。


「し、信じられん……スピードでこのライエルが完全に負けている……」

「さすがに10倍も強化すると、竜族を上回っちゃうか」

「……舐めるな」


 ライエルがうめいた。


「があっ!」


 咆哮とともに、その体が炎のようなオーラが立ち昇る。


 俺は強化した『布の服』や複数の加護アイテムがあるため、ノーダメージ。

 だが、衝撃波によって大きく吹き飛ばされてしまった。


 もちろん、これもノーダメージなのだが、ライエルとの距離が大きく開く。


「なんだ――?」


 奴の姿が、変わっていた。


 全長は十メートルほどだろうか。

 四肢が長く、虎やヒョウを思わせるしなやかな体躯。

 ただし、その顔は竜だ。


「これが俺の『竜体ドラゴニックフォーム』だ」


 竜獣と化したライエルが叫んだ。


「移動スキル――【アクセルⅨ】!」


 次の瞬間、その姿が消えた。

 いや、視認できないほどの速度で突進してきたのだ。


 速い――!


「スピードに特化した形態か!」

「そういうことだ! パワーならお前が上かもしれんが、スピードなら俺だ!」

「ぐっ……」


 強烈な体当たりを受け、さらに吹っ飛ばされる俺。

 当然ノーダメージなんだけど――。


「これで終わりじゃないぞ!」


 ライエルは超高速移動をしながら、二度、三度と俺に体当たりしてきた。

 やっぱりダメージはゼロ。

 だけど――。


「このダメージが積み重ねれば、いつかは通る――」


 それがライエルの狙いなんだろう。

 いくら俺のスピードが上がったとはいえ、さすがに今のライエルには勝てない。


「お前の力は『強化』なんだろう? だが、いくらパワーやスピードを上げたところで、しょせんは人間だ。竜族の真の力には――勝てん! 1の力を10倍にしたところで、最初から100の力を持つ者には勝てんのだ!」

「……そうかも、しれないな」


 奴の言う通り、種族の差は絶対的だ。


「だけど、一つ間違っている」


 俺はスキルを使うために集中する。


「なんだと……?」

「人間の持つ力は一つじゃない。他の力を組み合わせれば――」




『身体強化スキル【高速反応】を学習ラーニング

『強化ポイント「+3000」を消費し、スキルを強化したうえで、術者レイン・ガーランドに付与する』




 まずは反応や反射を増幅するスキルをコピーして強化。

 さらに、




『身体強化スキル【ソニックアイ】を学習ラーニング

『強化ポイント「+3000」を消費し、スキルを強化したうえで、術者レイン・ガーランドに付与する』




 動体視力を引き上げるスキルもコピーして強化する。


「お前のたとえを使うなら――10の力しかなくても3つかけ合わせれば、10×10×10で1000になるんじゃないか?」

「き、貴様……!?」

「スキル発動――【超速反応】【ライトニングアイ】」


 反射速度と動体視力が極限まで――いや、極限を超えて上昇する。


「見えたぞ、ライエル!」


 俺は奴の高速移動を完全に見切り、叫んだ。


 一閃――。

 振り下ろした『燐光竜帝剣レファイド』の一撃が、ライエルの体を両断した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る