8 脱出方法


「このっ……離せ――」


 俺は七竜騎ライエルに捕らわれ、動けない状態だった。


 いくら超強化した武器があっても、それを振るえなければどうにもならない。

 俺は着ている服や加護アイテムもすべて強化しているから、相手も俺を傷つけられないが――。


 このままでは、いたずらに時間だけが過ぎていく。


「こうしている間にもリリィたちが――」


 焦る。


 ――腕力を強化できないだろうか?

 考える。


 俺の付与魔術が『強化できる対象』は限定的だ。


 まず一つは無機物。

 その代表的なものは武器や防具、あるいはアイテムである。


 次にスキル。

 これは俺が一度でも見たことがあるスキルをコピーし、強化した上で俺自身に付与するというもの。


 後者は以前からできたわけじゃなく、俺のスキルの習熟度が上がったことで新たに使えるようになった。

 だから、今後はこの二種以外のものも強化できるようになるかもしれない。


 だけど、現時点では無理だ。


「……待てよ」


 ふと思いついた。


 スキル、か。

 なら、身体強化系のスキルを使えばいいじゃないか。


 考えてみれば、簡単なことだ。

 だけど、シンプルすぎて考え付かなかった。


「やるぞ――」


 俺が今までに直接見たことがある身体強化系スキルを思い浮かべた。




『身体強化スキル【フィジカルブースト】を学習ラーニング

『強化ポイント「+3000」を消費し、スキルを強化したうえで、術者レイン・ガーランドに付与する』




「【フィジカル・フルブースト】!」


 俺は身体強化スキルを発動した。

 もともとの【フィジカルブースト】はパワーやスピードをおおよそ2倍程度に増幅するのだが、こいつは10倍までアップできる。


「う、おおおおおおおおおおおおおっ!」


 10倍の腕力で、ライエルの拘束を強引に振りほどいた。


「な、なんだ、このパワーは……!?」


 ライエルが驚きの表情を浮かべる。


「人間の限界をはるかに超えている……なんなのだ、お前は――」

「ただの、付与魔術師だ」


 俺は不敵に笑ってみせた――。

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