6 大陸最強ギルド
大陸最強の五つのギルド──それを総称して『ビッグ5』という。
もともとは冒険者たちが言い出した二つ名だけど、今はギルド連盟によって与えられる称号みたいな扱いになっていた。
「これは当ギルドにようこそ、レイン殿。あなたのお噂はリリィから聞き及んでおりますぞ」
『星帝の盾』を訪ねると、ギルドマスター自らが出迎えてくれた。
七十歳くらいの老人である。
「ご丁寧にありがとうございます。レイン・ガーランドと申します」
俺は老マスターに一礼した。
「そちらはマルチナ殿……ですな? ウラリス王国で次期勇者の最有力だという……」
「恐れ入ります」
マルチナが会釈する。
「へえ、けっこう有名なんだな、マルチナって」
「勇者関係は知る人ぞ知る、というところね。そこまで一般的な話題じゃないし」
と、マルチナ。
「して、当ギルドにどのようなご用件でしょうか?」
「実はリリィに用件があって──」
俺たちは光竜王のことをかいつまんで話した。
『星帝の盾』のギルドマスターになら話しても大丈夫だろう、というマルチナの判断だ。
「承知いたしました。あいにくリリィはモンスターの討伐クエストに出ておりますが、まもなく帰る予定です」
と、マスター。
「戻り次第、ご連絡いたします。ギルド内の施設か、あるいは近隣にでもご滞在いただけますか?」
マスターとの面会を終えた俺たちは『星帝の盾』の建物内を歩いていた。
『青の水晶』と違って、このギルドの建物はとにかく大きくて広い。
ちょっとした城くらいはあるだろう。
さすがは何十年も大陸最強ギルドの一角に位置するだけはある。
「リリィさんはこのギルドのエースなのよね? やっぱり忙しいのかな」
「だろうな。アポイントを取るべきだったか……」
俺は小さくため息をついた。
「急な要件だったし、待つしかないね。ギルドマスターさんも戻ってきたら連絡する、って言ってくれてるし」
マルチナが言った。
と、
「リリィ・フラムベルがギルドのエースだと?」
身長二メートルを優に超える巨漢が俺たちに近づいてきた。
「冗談じゃねぇ! ギルドのエースはこの俺、『怒涛の大斧』のマイゼル様だ! あんなガキをエース扱いは不愉快なんだよ!」
いきなり言いがかりをつけられた。
「ふーん、随分と怒ってるのね。その理由……あたし、分かっちゃった」
と、ドヤ顔のマルチナ。
「分かっちゃったも何も、こいつが全部理由を話してたけど」
「この洞察力──さすがあたしね。これぞ勇者候補って感じよね、レインくん?」
「あ、うん、まあ」
ドヤ顔したかっただけなんだな、マルチナ。
「レイン? さっきギルドマスターが他所の冒険者に挨拶してるって話を聞いたが……そうか、てめぇが噂のレイン・ガーランド……!」
「えっ、噂になってるのか?」
「……リリィの奴がえらく買ってるんだとよ」
マイゼルは面白くなさそうに説明した。
「見たところ、とても強そうには見えねぇな。リリィの奴に見る目がないのか、あるいは──てめぇに惚れて、そんなことを吹聴しているのか」
ニヤリと笑う。
「どれ、俺様が試してやろうじゃねーか。リリィが認める冒険者の力を。S級冒険者である、このマイゼル・ゾールライバー様が!」
うーん、面倒くさそうな奴に絡まれたなぁ。
とりあえず怪我しないように、適当な強化アイテムでこいつを無力化しとこう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます